【民法改正】消滅時効の期間
2020.10.14[契約]
【権利が発生して消える「時効」】
こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
今年の4月に大きな改正がおこなわれた、民法。
民法は、私人間においての権利義務関係を
ルール化した法律ですが、
改正により、
特に契約におけるルールが大幅に変更となりました。
相手から注文を受けて物を作ったり、販売するなど、
契約に基づいて、相手に金銭や物品を請求できる権利を
債権と言います。
注文した相手方には、物と引き換えに、
金銭や物品を渡す義務である債務が発生します。
債権には、発生と同時に、
その権利や法的ステータスをキープできる期間
が生まれます。
これを、時効と言います。
言い変えると、
債権は、
無期限に存在するわけではなく、
債権者が持っている権利を行使しないで、
一定の期間が経過すると、
その権利は消滅してしまいます。
たとえば、
商品を販売したが、相手が料金を支払ってくれない場合でも、
時効期間が過ぎれば、その債権はなかったことになる
ことになります。
これを、
「時効が消滅する」と言います。
改正後の民法では、
この「消滅時効の期間」に関するルールが
変更となりました。
【時効期間のルールが変わりました】
<改正前>
債権の時効が消滅する期間は、
基本的に10年
一部の債権については、1~5年
といった
短期的な期間が個別に設定されていました。
さらに、
商人間の債権は商法
労働条件の債権は労働基準法
といった
特別法によってカスタマイズされていました。
つまり、
時効についてのルールが種類分けされ、
さらに複数の法律にもまたがっていたため、
自分が今持っている債権は、
どの法律で定義されていて、
時効は何年有効なんだろう?
そんな風に迷われる方も、
少なくありませんでした。
<改正後>
改正前のルールは、すべてリセットされ、
取引によって発生する債権の時効期間は、
権利行使可能であることを知ってから5年
または
権利を行使できる時から10年
とシンプルなルールになりました。
※個人間の債務については、
行使可能な権利を放置した場合、
消滅時効期間は10年から5年に短縮されます。
ちなみに、
未払いの給与や残業代については、
消滅時効期間は5年としつつ、
当面の間は経過措置がおかれており、
3年となっています。
【不法行為に関連する消滅時効】
不法行為によって、
生命や身体を侵害された被害者は、
損害賠償を請求することができます。
この、損害賠償請求権の時効期間も、
改正によって変更となりました。
<改正前>
①不法行為による損害賠償請求
における消滅時効の期間は、
損害・加害者を知ったときから3年
または
不法行為のときから20年
でした。
また、
②「契約上の債務不履行」によって
生命・身体を侵害された場合は、
一般的な債務不履行と同様に、時効期間は、
権利を行使できる時(不法行為時)から10年
とされていました。
そのため、
生命や身体の侵害にあたって、
不法行為と債務不履行のどちらに基づく請求をするのかで
消滅時効期間が変わるため、
当事者間で戸惑いやトラブルの原因になりかねませんでした。
<改正後>
生命・身体への損害に対する損害賠償請求権
(たとえばDV・虐待・暴行、殺人など)
については、
損害・加害者を知ったときから5年
または
権利を行使できるときから20年
に延長されました。(民法724条2項、167条)
※生命・身体以外の損害
(窃盗、名誉棄損、不倫の慰謝料請求など)
の賠償請求権については改正前と変わらず、
3年のままとなります。
ちなみに、
不法行為債権の20年の期間制限に関しては、
改正前は「除斥期間(じょせききかん)」と呼ばれていましたが、
改正後は、この期間も消滅時効であることが明記され、
被害者の権利がより手厚く保護されることになりました。
(民法724条の2)
【新しい時効ルールはいつから使えるの?】
新しい時効の消滅期間については、
改正民法が施行された、
2020年4月1日
=契約を締結した時期が
今年の4月1日から発生している場合
から適用されます。
そのため、
発生した債権が2020年4月1日より前か後か
に注意する必要があります。
※生命・身体の損害に対する損害賠償請求権は、
同日時点で時効が完成していない権利があれば、
改正後の時効が適用されます。
⇒2020年4月1日以前に発生した債権は、
改正前の消滅時効が適用となります。
債権者と債務者、
権利関係から、その立場は分かれますが、
今、有効とされている法律で、
どのくらいの消滅時効の期間があるのか
を知ることは、非常に大切です。
また、
こういった権利関係を、最新の法律にあてはめて、
契約書に反映した事項を
当事者が合意していることが必要です。
リニューアルされた時効の期間を念頭に置きながら、
ビジネスや日常生活に生かしていきたいですね。
契約ごとはもちろん、
権利関係の確認において不明点がございましたら、
是非、WINDS行政書士事務所までお気軽にお問い合わせ下さい。