【民法改正】時効のコントロール(?)
2020.11.11[契約]
【時効は「コントロール」できる?】
こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
権利や義務が発生する場面においては、
その権利の行使や義務の履行が有効とされる期間=時効
が存在します。
これまで時効は、
シチュエーション別にバラバラな期間が
設定されていましたが、
民法が改正されて、スッキリと統一されました。
※以前のコラムで、時効の期間についてご紹介しています。
⇒こちら
この時効は、
そのまま消滅させることなく、
状況に応じて調整できることがあるのを、
ご存じでしたでしょうか。
【時効は「更新」できる】
進行している時効は
一定のアクションを起こすによって
期間のカウントをリセットすることができます。
これを、改正前は、
「時効を中断する」と言っていましたが、
改正後は、
「時効が更新される」
という表現にルールが変わりました。
たとえば、
5年間の時効期間が2年進んでいると、
残りの時効期間は3年となりますが、
時効が更新されると、
それまで経過していた3年の期間は
まったく意味のない期間となり、
新たな時効期間として5年の期間が
最初から進行することになります。
※確定判決または確定判決と同じ効力を持つもの
によって確定した権利については、
更新前の時効期間が10年より短いものであっても、
(確定時に弁済期が到来していない債権以外のみ)
10年の消滅時効にかかります(174条)。
時効を更新するためには、
次のような行為が必要となります。
(民法147条2項、148条2項、152条1項)
※判決の確定前に訴訟を取り下げた場合、
手続終了時から6ヶ月間は時効完成が猶予されます。
その期間中に再度中断の手続きを取らない場合、
消滅時効の経過により権利は消滅します。
【時効は「一時停止」できる】
時効は、
なにかの事情が発生した場合に
その事情が終了したりおさまるまで
または一定期間、
完成する前に一時停止となることがあります。
これは、改正前、
「時効を停止する」
と呼ばれていた制度でしたが、
改正後は、
「時効の完成を猶予する」
と呼ばれるルールに変わりました。
時効の完成が猶予される行為としては、
以下のものがあげられます。
(民法147条、148条、149条、150条、151条1項)
このルールは、
時効期間の進行が完全に停止するわけではなく、
完成猶予となる事由が発生した後しばらくの間、
時効の完成を見送るというだけにすぎません。
そのため、
その事由の事実が発生したとしても、
時期によっては完成猶予の効果が発生しない
とうこともありえます。
具体例としては、夫婦間の権利があげられます。
この権利は、
婚姻が解消した時から6か月を経過するまでの間は
時効は完成しません。
(民法159条)
もしも、婚姻を解消する時期が、
本来の時効完成の時期よりも6か月以上前であれば、
時効の完成時期が到来する前に6か月が経過してしまうので、
完成猶予の効果は発生しません。
また、時効完成猶予は、
地震や台風といった、天災などの被害
においても、有効とされています。
天災が起こった場合、
時効完成猶予の手続きを進めることは
現実的に難しく、
裁判所も業務停止となることは
容易に想像できます。
改正前は、
時効の停止手続きのための猶予期間が、
2週間となっていましたが、
改正後は、
3か月に変更となりました。
※天災のほか、
現在の新型コロナウイルスによる影響も、
このルールに適用されます。
【時効の制度を有効に使いましょう】
これら時効の更新、完成猶予のルールは、
改正民法が施行された、
2020年4月1日から有効
=契約を締結した時期が
今年の4月1日から発生している場合
となっています。
そのため、改正後の新ルールが適用されるのは、
2020年4月以降に発生した債権
に限られます。
また、
債権の種類や発生したシチュエーションによって、
早めの対応が求められるものもあります。
債権者の皆さまは、
4月1日より前に発生した、未回収債権がある場合は、
時効の成立前に、できるだけ早く回収する
のがのぞましいです。
債務者の皆さまは、
その債務の消滅時効が完成している可能性がある場合、
履行を請求されたときの対処方法を考える
必要があります。
民法改正は、ご紹介した時効以外でも、
法人さまだけでなく、個人の皆さまにも
大きな影響をおよぼす問題が少なくありません。
契約やビジネスにおいて、不安な点がございましたら、
WINDS行政書士事務所にてアドバイスを差し上げたり、
リーガルチェックをさせていただきますので、
お気軽にお問い合わせください。