【どっちがいい?】永住と帰化
2021.10.06[VISA]
【在留外国人の最終ターゲット?】
こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
外国人が日本に在留するとき、
日本での立場や職業によって区別される、
在留資格(VISA)を取得します。
在留資格を取得して、
日本での在留年数が長くなった
外国人の皆さまが
最終的に検討するのが、
永住者VISAの取得
日本国籍への帰化
のいずれかではないでしょうか。
永住と帰化はどっちが得なの?
永住と帰化はどう違うの?
今の自分は、永住と帰化、どちらがとれそう?
という問い合わせや相談は
当事務所でも定期的にお受けする機会があります。
永住と帰化は、
どちらもほかのVISAと比べて
長く日本にいることができますが、
それぞれメリットとデメリットがあります。
ふたつの制度を詳しく理解することで、
外国人の皆さま自身が本当に望んでいる形が
見えてくるでしょう。
【永住者VISAとは】
永住者VISAは、
数ある在留資格のなかのひとつで、
日本の入管法(出入国管理及び難民認定法)上、
トップランクに位置づけられています。
※以前のコラムで、
永住者の要件について詳しく説明しています。
⇒こちら
永住者VISAを持つことによるメリットは
次のふたつが大きいです。
①在留期間が定められていない
ほかのVISAでは、
在留期間が限定されています。
永住者VISAと似ているものとして、
配偶者VISAが存在しますが、
在留期間はどんなに長くてもMAX5年まで
となっています。
(高度専門職2号は除きます)
外国人の皆さまが
在留期限がせまり、
引き続き日本に在留を続けたい場合は、
在留期間更新許可申請をして
許可を得なければならず、
在留を続ける限り、
都度申請の許可を得るまで
ドキドキされているのではないでしょうか。
これに対して、
永住者VISAは在留期間が定められていない
ため、
永住者VISAを取得してからは
VISAの申請は不要となり、
在留審査のドキドキから
解放されることになります。
ちなみに、
永住者VISAの在留カードは、
7年の「カード有効期間」
が定められています。
これは、7年経過すると、
永住者VISAが無効になるというわけではなく、
カード自体の有効期間に過ぎず、
在留カードの有効期限が過ぎても、
新しい在留カードを発行できます。
<永住者VISAの在留カード>
②日本国内での活動が無制限
外国人が取得するVISAによって
日本での活動内容が定められ、
在留中は、その活動をし続けていく必要があります。
定められた在留活動を一定期間行っていない、
たとえば、
就労VISAを持っていたが、
前の職場を退職し
3か月以上無職orアルバイトをしていた
または、
配偶者VISAを持っていたが、
離婚・死別したまま
VISAの変更申請をしなかった
という場合は、
VISAの取り消しにつながります。
また、転職をする場合でも、
自由に職種を選ぶことはできず、
転職先での仕事が
取得している就労VISAの要件にフィット
していなければなりません。
これに対して、
永住者VISAは在留活動に制限がありません。
在留活動が自由になりますので、
仕事も職場が自由に選べ、
離婚や結婚などのライフイベントで
VISA申請の変更を気にする必要もなくなります。
外国人の皆さまにとっては、
日本でのライフプランの選択肢が
さらに広がることになりますね。
永住許可申請は、
出入国在留管理局に対しておこないます。
日本国内での収入や課税納税状況、
社会保険料の支払状況などの資料を提出し、
これまでの日本での在留状況を審査されます。
※海外から、婚姻や親子関係の証明書類
を取り寄せ、提出することもあります。
審査期間は標準4か月
と公開されていますが、
地方入管によっては、
6か月~10か月程度かかることもあります。
虚偽の書類を提出して
不正に永住許可を得た場合、
永住者の在留資格取り消し
また、
罪を犯してしてしまい
懲役刑を受けることになれば、
退去強制処分の対象
と、
ペナルティや申請時の注意事項が厳しいです。
※2021年10月1日より、
永住許可申請をしてから審査結果が出るまでの間に、
事情の変更があったにもかかわらず、
出入国在留管理局に連絡をせず永住許可を受けた場合、
永住許可が取り消される場合がある旨の
「了解書」の運用もスタートしました。
<出入国在留管理局:了解書イメージ>
また、永住者は、
海外に出て日本に再入国するとき
必ず再入国許可(みなし再入国許可)
を得なければなりません。
再入国期限までに再入国できなかった場合は、
永住権を失ってしまいます。
【帰化とは】
帰化するとは、
申請者本人の意思や希望で
ほかの国の国籍を取得する
ことをいいます。
日本は二重国籍を認めていないため、
他国の外国人が日本国籍へ帰化する場合は、
日本国籍を取得する=日本人になる
ということになります。
※国籍選択の制度については、
以前のコラムでも詳しくご紹介しています。
⇒こちら
※中国では、
2人以上の子供を戸籍登録できないため、
3人以上の子供を作りたい場合、
子供の国籍を理由に
帰化相談を受けることがあります。
外国人が日本人になれば、
入管法で定義される外国人に該当しなくなります
ので、
VISAを持たなくて済み、
VISA申請をはじめとした
在留外国人に課せられる
いろいろな手続きや義務から解放されます。
また、国からも、
日本人としての私生活を干渉されません。
帰化申請は、
日本人の戸籍を管理する
法務局に対しておこないます。
親族関係や出生、
婚姻や養子縁組に関する書類を提出し、
これまでの日本の在留状況や、
申請者本人の身分関係が審査されます。
※帰化申請については、
以前のコラムでも詳しくご紹介しています。
⇒こちら
※身分事項に関する記録には、
本国公的機関発行の証明が必要です。
帰化申請の審査期間は非公表
となっていますが、
特別永住者以外の一般外国人であれば、
申請から正式に許可が下りるまで、
1年から2年ほどかかるのが通常です。
※私の場合は、帰化に2年6か月かかりました。
以前のコラムで、申請当時のことをご紹介しています。
帰化が許可されると、
その許可が取り消されることはなく、
国外退去を命じられる心配もありません。
また、
日本のパスポートを使って海外へ渡航する
ことや、
参政権(選挙への参加や国会議員になる権利)
を持つことができます。
※日本は多くの国と
査証免除協定を結んでいるため、
協定国とはビザなしで渡航OKです。
こういったメリットの一方、
帰化申請自体は簡単に取り消せない
ので、
慎重に準備を進める必要があります。
たとえば、
日本への帰化の気持ちがゆらいだとしても、
外国人が帰化許可を受けた後は
元の国籍に戻すことはできません。
日本は二重国籍を認めていないため、
帰化許可を取り消して無国籍者を作る
という不利益の発生が許されない
ためです。
※帰化申請プロセスに
重大で明らかな違法性がある場合は、
帰化許可処分の無効確認の訴え提起などで、
帰化を無効にできることはあり得ます。
【永住と帰化、選ぶべきは?】
ご紹介した永住と帰化の違いをまとめると、
このようになります。
単純に、
日本に永く暮らす
という目的を考えると、
永住よりも帰化の方が
より多くのメリットを
感じられるかもしれません。
しかし、
帰化すると
母国の国籍放棄は避けられません。
帰化を果たした外国人の皆さまが
本国に帰省する場合、
今度は本国のVISA申請が必要になります。
また、
1度変えた国籍は容易に元には戻せませんので、
非常に大きな決断をせまられます。
外国人の皆さまが、
1番大切にしている在留目的はなにか?
1番安定する身分はどちらか?
これからのライフプランや可能性は?
自分のアイデンディティーをどう認識している?
母国の制約などのネックが解消される?
といったことを、
それぞれの事情やお気持ちをふまえて
よく考えて頂き、
そのうえで、
2つの制度の違いとメリットが
マッチする選択をしていただきたいです。
WINDS行政書士事務所は、
VISA申請や帰化申請におけるご相談を承っております。
申請のご希望がありましたら、
いつでもお気軽にお問い合わせください。