【本人の意思の体現】任意後見契約
2022.03.23[契約]
【万が一を見据えた契約スタイル】
こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
日々、健康や不意のトラブルに気を付けて
日常生活を送ってはいるものの、
「今は元気だけど、
将来自分の財産管理が不安」
「ほかに身寄りがなく、
将来、大切な人に
この財産とあの手続きを託したい」
「自分の身になにかあったときに備えて
自分の意志で自分のモノやお金について
決めておきたい」
将来に漠然とした不安
をお持ちになったことはありませんか?
そんなときに
役に立つ制度として
任意後見契約
があります。
任意後見契約は、
安心で堅実な手続きを経て、
信頼のおける方のサポートが見込める制度です。
契約内容や締結プロセス、
契約スタートから終了にいたるまでの
ながれを知っておくことで、
有効にご活用いただけます。
【任意後見契約とは】
任意後見契約とは、
本人が将来的に
認知症などで判断能力が低下してしまう
ことに備え、
本人の判断能力があるうちに
自分の信頼する人を後見人に選び
代わりにお願いしたい事務や責任を
事前に定めておく契約
です。
すなわち、
判断能力がなくなる前に
自分の意志と希望で
自分が気がかりな事務手続きや責任を
自分が信頼できる人に任せられる契約
です。
後見には以前から
法定後見という契約スタイルもあります。
これは、
本人が判断能力をなくした後に
後見人が決定
となります。
そのため、
本人の意思とは無関係に、
全く面識がない人が後見人に就任する可能性
も少なくありません。
また、
後見人の選任には親族からの申請が必要
であったり、
本人の意思が尊重されるとも限りません。
本人にとっては
任意後見契約が大きな安心材料になる
ことは間違いないですね。
※家族信託という制度もありますが、
後見制度とは違い、
財産処分権は受託者に与えられます。
この契約は、
公正証書の作成が必要で、
単なる契約書の作成だけでは無効となります。
任意後見契約のメリットと課題は、
次のようなものがあげられます。
<メリット>
①後見人のセレクト
被後見人となる本人は、
自由に後見人となる方を選んでいただく
ことができます。
②契約タイミング
本人が被後見人になるにあたって、
判断能力が低下する前に契約を結ぶ
ことができます。
③被後見人の生活充実度
本人は判断能力を引き続き持ちながら
これまでの日常生活もキープできます。
③後見業務の適正運用
後見人の業務が適切に遂行できるよう、
家庭裁判所では任意後見監督人を選任します。
この任意後見監督人をとおして、
後見業務の遂行内容をウォッチしてくれます。
④契約の確実性
任意後見契約において作成される
契約書は公正証書とし、登記されます。
そのため、
任意後見契約はオフィシャルなものとなり、
任意後見人の立場も向上します。
<課題>
①死後事務はできない
任意後見契約は
ご生存される本人のための契約ですので、
死後に発生する事務は委任できません。
②取消権がない
法定後見にあるような
取消権が備わっていません。
③業務遂行のスピード
就任する後見人や事情によっては、
お任せする業務が
すばやく対応されない場合があり、
財産管理の委任契約などにくらべると
迅速性に欠けることも多い傾向があります。
【任意後見人】
任意後見人は、
家族や親せき、友人など、
誰でも就任することができます
ので、
本人にとって信頼が厚い方を
選任いただけます。
契約内容を
きっちりと履行してほしい場合は、
行政書士などの専門家へ依頼したり
法人と契約を締結することも可能です。
ただし、
以下の皆さまは、
任意後見人には就任できません。
選任された任意後見人の役割としては、
本人の代わりにおこなう
モノやお金の管理(財産管理)
本人がきちんと日常生活を送れるための
サービスを受けられるための対応(身上監護)
に大きく分けられます。
※これらに該当しない業務を
委任する場合は、
別途契約を結ぶなどで対応が可能です。
後見人が受け取る報酬は、
被後見人との間柄によって自由に設定でき、
契約開始後より
本人の財産から支払われます。
【任意後見の契約パターン】
任意後見契約は、
その契約タイミングでの状況に応じて
次の3パターンに分かれます。
※見守り契約とは、
具体的なサポートこそはしませんが、
時々連絡をとるなど
利用者を見守りながら
信頼関係を継続させる契約です。
適切と思われる時期に、
任意後見監督人選任申立手続き
のタイミングを計ります。
【任意後見契約の活用ケース】
任意後見契約を
セットで活用できるライフイベントとしては、
「終活」
(葬儀や相続など想定する手続きに向けて
老い支度したい)
「パートナーシップ」
(最愛のパートナーに
自分のサポートを託したい)
「施設の利用、入居」
(施設入所契約をきっかけに
身元保証も兼ねて後見人を付けたい)
といったものがあげられます。
【任意後見契約の手続き】
①任意後見受任者の決定
後見を希望する本人が、
任意後見人となる方を決めます。
この時点では、
任意後見受任者はまだ、
任意後見人に就任していません。
②契約内容の決定
任意後見契約を結びます。
契約内容は、
「身体が動かなくなったら
あの施設に入所したいんや」
「かかりつけ医さんはここの病院がいいな」
「年2回はお墓参りに連れてってね」
「後見人さんの報酬はタダでいいわ」
「必要経費はこの口座から引き出してな」
といった本人のリクエストを、
任意後見人になる方と話し合いながら
自由に決められます。
その一方、
任意後見人は
契約外のことはできません。
本人の日常生活において
任せたい業務や設定報酬額は
できるだけ具体的に決めていく
とよいでしょう。
ちなみに、
任意後見契約における権利の性質上、
次のような業務は契約対象外となります。
任意後見契約外で
任せたい業務を加えたい場合は、
②⇒準委任
③⇒死後事務委任
といった契約を別途締結すること
も、検討したいところです。
また、
本人の日常生活に寄り添った業務
を任せることから、
契約内容を決めるときに、本人の、
病歴
勤務先
定期的に通う施設の場所
なども伝えておく
とよいですね。
任意後見人への報酬の支払時期は、
特に決めなければ、任意後見事務終了後
となりますが、
定期的な支払いとする場合は、
契約書にその旨記載しましょう。
※東京家庭裁判所にて、
後見契約における報酬額の目安が紹介されています。
https://www.courts.go.jp/tokyo-f/vc-files/tokyo-f/file/130131seinenkoukennintounohoshugakunomeyasu.pdf
③契約の公証
②を決定した後は、
必ず公証役場で公正証書を作成します。
この公正証書がないと
契約は無効となってしまいます。
公正証書の作成手続きは、
公証人が本人の代理人として
進める場合もあります。
後見人への報酬が発生する場合は、
公正証書に報酬規定を記載します。
⑤で登場する
任意後見監督人についての希望も
明記できます。
④判断能力低下の予兆
これについては、
本人の体調や病状の関係で個人差があるため
決して、契約締結してすぐに
任意後見契約の効力が発生する
というわけではないですが、
本人が認知症などの症状が見られたり、
判断能力の低下を自覚されたときは、
⑥に進みます。
⑤任意後見監督人の選任
契約締結後、
本人の判断能力低下を確認したら、
いよいよ任意後見契約に向けた
最終手続きに入ります。
この段階で、
本人の住居地を管轄する家庭裁判所
に対して、
本人
配偶者
四親等内の親族
任意後見受任者
のいずれかが
任意後見監督人の選任を申し立てます。
家庭裁判所は任意後見審判の結果、
任意後見監督人を選任し、
この時点でいよいよ
任意後見契約の効力が発生
します。
※家庭裁判所の審判期間割合は、
2ヶ月以内の終局=70.1%
4ヶ月以内の終局=92.4%
となっています。
裁判所:令和2年成年後見関係事件の概況
https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2021/20220316koukengaikyou-r3.pdf
任意後見監督人は、
任意後見人から提出される
財産目録をチェックするなど、
契約内容に沿って
後見人が適正に業務を遂行しているかを
監督し、
任意後見人によるサポートがスタートします。
⇒当事務所までご相談ください。
⑥登記
任意後見契約の権利関係を
明確なものににするために、登記されます。
この登記によって、
法務省の後見登記簿に任意後見人が記録
任意後見人がオフィシャルに開示
されることになります。
契約の効力発生後は、
登記簿が代理権の証明書類となります。
※任意後見スタート後は、
移行型や将来型で締結していた
任意代理契約は終了となります。
【任意後見契約の終了】
何らかの理由で任意後見契約を解除したい場合は、
本人、任意後見人どちらからでも申し立てでき、
公証人の認証を受けた書面があれば、
好きなタイミングで解除することも可能です。
任意後見契約が終了するおもな理由としては、
次のようなものがあげられます。
また、
任意後見人に
不正行為や著しい不行跡、
その他任務に適しない事由があるとき
は、
解任請求権者の請求によって
家庭裁判所は任意後見人を解任
することもできます。
解任請求権は、
任意後見監督人
のほか、
本人
本人の親族
検察官
が行使できます。
※任意後見監督人が選任される前であれば、
さらに公証人の認証が必要です。
【本人の意思の尊重がとても大切】
任意後見契約は、
本人の意思が最大限尊重されます。
認知症対策としても非常に有効な契約です。
任意後見契約の活用で、
円滑で安全な財産管理が見込めますが、
申し立てや後見人との間の意識合わせ
後見人制度の十分な理解など、
契約後のトラブルを防ぐためにも
慎重で丁寧なプロセスを経る必要があります。
WINDS行政書士事務所では、
任意後見をはじめとする契約ごとのご相談、
契約内容のドラフティングや公証手続き
をサポートさせていただいております。
制度にご興味のある方は、
是非お気軽にお問い合わせください。