【成立するの?】口頭での契約
2022.11.30[契約]
【コトバでかわす約束の力】
こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
皆さまがビジネスのみならず、
日常生活全般において必ず関わるものに、
契約
があります。
契約をとりかわした当事者が
契約内容への合意を形にするものが
契約書や規約となります。
しかし、シチュエーションによっては、
取り交わした約束や契約は、
これらのような書面ではなく、
口頭でかわされることも
あるのではないでしょうか。
当事者の記憶を除くと、当然、
契約や約束の内容が形に残りません。
この場合、
契約は成立するでしょうか。
当事務所でも、
口約束だけの契約は成立するの??
相手から言われた約束を守ってくれない場合は
損害賠償できるの??
電話での約束は契約と考えていいの???
口約束の契約でも
契約不履行を理由に契約解除できるの??
などといったご相談をお受けしています。
簡単なようで意外と奥が深い、
こうした契約知識。
契約における豆知識としてを知っておくと、
普段の生活で、非常に役立ちます。
【契約の成立条件】
法律上、契約は、
申し込み
と
承諾
両方の意思表示が合致
すれば、成立するものです。
つまり、
「あれしてほしい、これください(申し込み)」
という人に対して、
「いいよ(承諾)」
と相手が返事をすると
契約が成立することになります。
契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
(民法第522条)
当事者の合意をもって成立する契約は、
諾成契約
と呼ばれます。
諾成契約の条件に
物の引き渡しなどの給付を加えて
初めて成立する契約は
要物契約
と呼ばれます。
契約における合意事項を守らなかった場合は、
契約不履行となります。
契約不履行となると、
当事者の一方の不履行や契約違反
につながり、
それらを確認できた時点で、
もう一方から契約を解除することができます。
また、
当事者の合意を条件に、
ほかの商材やサービスの提供を追加請求
することもできます。
※未成年がおこなう契約とその効果については、
以前のコラムで詳しくご紹介しています。
⇒こちら
契約が成立すると
一方には債権(受ける)が発生し、
もう一方には債務(する、あげる)が発生します。
契約における債権には
消滅時効
と呼ばれる有効期間が発生します。
その期間は、通常、
契約当事者である債権者において
権利を行使することができる
(代金支払や商品の引き渡しを求めることができる、など)
と知っていることから5年
です。
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき
(民法第166条)
※消滅時効については、
以前のコラムで詳しくご紹介しています。
⇒こちら
また、契約は、
合意なく一方的な契約変更や解除ができません。
契約が成立するまでに
確認が必要と思われるポイントとながれは
次の図のようにまとめることができます。
【口頭での契約は?】
契約は、口頭でも成立するでしょうか?
結論としては、
契約書などの書面に残らず、
口頭だけでかわした契約であったとしても
正式な契約として認められます。
口頭の契約が成立する条件もやはり、
申し込みと承諾の意思表示の合致
が必要です。
契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
(民法第522条第2項)
日常生活でありふれた口頭の契約といえば、
友だちや家族同士でのお金の貸し借り
があるのではないでしょうか。
このとき、約束ごととして、
来週全額返す
返せなかったら2倍支払う
という口約束をした場合でも、
立派な契約として成立するわけです。
また、
アプリケーションを介して
お店にタピオカドリンクを注文して、
自宅まで運んできてもらうなどの、
UBER EATSによる出前
も、口頭で成立する契約になり得ます。
次のような契約は、口頭でも成立し得ます。
口頭でかわす契約もまた、
債務者が債務を履行しない
(例:料金を払わない、
履行に必要な情報などを提供しないなど)
場合に、
債権者は債務者へ催告するうえに、
契約の解除や損害賠償の請求
また、
債務者が
債務を履行することが不可能な場合、
債権者は催告せずに契約解除が可能です。
口頭契約をもし解除したい場合は、
法律上の契約解除ができる要件を満たす
ことができれば、可能です。
次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
一 債務の全部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
四 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
五 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。”
(民法第第542条)
契約のなかでも、
贈与契約の場合は、
口頭でなされ、
まだ履行が終わっていない場合は
口頭による解除(=撤回)ができます。
書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。
(民法第550条)
契約の解除とは別に、
特定商取引法で定められた
クーリングオフといった例外も存在します。
※クーリングオフについては
こちらのコラムで詳しくご紹介しています。
【書面の必要性】
口頭でも契約が成立する
ということであれば、
契約書などの書面は
わざわざ作らなくてもよいのでしょうか?
この点について、
私は、お客さまに、
契約を結ぶときには必ず
契約書や何らかの書面に残すべき
とアドバイスしています。
契約相手が高い信頼のおける人であれば
トラブルのおそれは少ないかもしれません。
しかし、そうでない場合、
相手に対する信頼度は重要な要素となります。
もしも、
自分にとって信頼度が低い相手であれば、
債務が履行されないのではないか
合意条件が受け入れられていないのではないか
といったドキドキする意識が高まると
債権者の生活や活動に影響がおよぶでしょう。
また、
口頭だけの取り交わしに終始すると、
契約内容に関する証拠がなく
「言った言わない」といったトラブル
になりやすく
立証資料がないため契約上不利になるリスク
もあります。
こうしたシチュエーションに備えて、
契約や合意事項
やり取りの証拠
が形として残っていれば
契約を補完する役割を果たすことができます。
契約書や合意書が作成されている場合は
これらの書類を有効に保つために、
契約当事者の署名と捺印
も、当然忘れてはならないでしょう。
ちなみに、
法令上のルールで決められている契約
については、
口頭での取り交わしが無効となるもの
があります。
次の種類の契約は、
具体的な金額や数字、条件を
詳細に定めなければなりませんので、
注意しましょう。
【口頭契約におけるそのほかの対策】
口頭での契約を取り交わした当事者に
トラブルが発生した場合、
取り交わす契約に違反した場合は
弁償や損害賠償、違約金の発生など
に発展する可能性が高まりますので、
契約書や合意書類に残すことが重要ですが、
もし、契約内容を
それら書面に残すことが難しい場合は
当事者の記憶ややり取りを
鮮明に確認できる書類やデータ
に残すことを心掛けましょう。
具体的には
やりとりの録音
メール履歴の整理
内容証明郵便の作成
などがあれば、
スムーズな債務履行に加えて、
早い段階での契約解除の実現につながります。
【口頭と書面がミックスした契約】
たとえば、
口頭で契約を取り交わして、
後日、備忘録として、
その事実と留意事項を
契約書まではいかない書面に残した場合は、
どうなるでしょうか。
あり得るケースとしては、
口頭の約束をした後、
約束の内容と、契約解除は認めません
というメールが送られる
というように、
事前に当事者の契約解除権の放棄
をうながすものです。
この場合、
相手方に契約不履行があった場合には解除できる
と、合理的に意思解釈をくみ取れる
ことは大いにあります。
たとえば、
売買契約においては、
代金の支払いと商品の供給はセットになっているべき
ですので、
買主が売主に売買代金不払いで商品供給を求める
ような契約事項は、通常はおかしな話です。
万が一、
そのような契約事項が合意されていたとしても、
契約解除権を行使しないことが
著しく不合理と認められる場合は、
信義則違反
権利濫用
公序良俗違反
といった
社会正義的な理屈に基づいて
契約解除が認められることになる場合がある
と考えられます。
※これを、一般法理といいます。
ちなみに、
スマートフォンなどの端末利用契約
に代表されるような
事業者と消費者との間の消費者契約の場合は、
消費者が
契約不履行に基づく解除権を放棄する合意は
消費者契約法上無効
=消費者は契約解除できるようになっている
とされています。
【口約束だけで終わらないように】
私たちにとって、
生活やビジネスにおける契約や約束は
欠かせない法律行為ですが、
契約事項を記した書面がなかったとしても、
成立でき、口頭だけでも有効です。
しかし、
口約束を理由に、当事者間で
必要有効なアクションがなかったり、
契約当時になかったルールが変わったりすると、
思わぬトラブルに発展するおそれ
がありますので、
契約書をはじめとした書面に残すべき
と考えます。
トラブルが、訴訟にまで発展した場合に
残しておいた書面やデータは
証拠価値を高く発揮します。
法律行為には書類をセットで意識するのが、
リスクマネジメントの第一歩となります。
WINDS行政書士事務所では、
契約書類の作成やリーガルチェック
を承っております。
生活やビジネスが彩りのあるものになるよう、
契約の専門家にご相談ください。