【怪しい商売に対抗】クーリングオフ
2022.12.22[契約]
【契約原則の限界に立ち向かう】
こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
私たちが日常生活を送るうえでは、
なにかを買ったり、申し込んだりする機会にあふれています。
「この100円のチョコレートをください」
という買主の申込みに対して、
「かしこまりました、ありがとうございます」
という売主の承諾があり、
売主と買主両方の意思表示が合致すれば、契約が成立します。
契約事項はお互い守らなければならず、
一方的には解除ができないのが
契約の鉄則です。
※契約の意思条件については、
以前のコラムでもご紹介しています。
⇒こちら
しかし、
売主が突然家に押しかけたり、電話したりと、
ほとんど不意打ちのような形で勧誘されたり、
あいまいな説明で
買主によく考える時間も与えず
契約書にサインさせられる場合は果たして
この鉄則にフィットする取引といえるでしょうか。
1度契約したら守らければならない
契約の鉄則を
そのまま守ることになれば、
買主にとっては
明らかに不利な立場になりますね。
このようないびつな契約に
立ち向かえるルールがあります。
それが、
クーリングオフ
です。
【クーリングオフとは】
クーリングオフとは、
特定商取引法に基づいて
契約や取引上、
不利な立場に陥った消費者を守るべく
消費者が一定期間内であれば、
一方的な意思表示だけで
無条件で申込みの撤回や契約解除ができる
契約原則の例外ルール
となるものです。
例外ルールとしての位置づけのため、
すべての取引に
この制度が適用できるわけではなく、
法律や約款などに定めがある場合
消費者が、
不意打ち性の髙い商法に直面したとき、
申し込みの意思がはっきりしないままに
契約の合意や申し込みをしてしまう
ことがあり得ます。
そんなときは、
クーリングオフの利用によって
消費者はいったんクールダウンして
本当に契約に申し込んでよいかを
じっくり検討する機会を得る
ことができます。
クーリングオフが適用される場合
事業者は、消費者に対して、
損害賠償や違約金の請求、説明要求など
はできません。
クーリングオフ対象になるかどうかは、
商品やサービスの種類ではなく、
契約したシチュエーション=取引内容
が判断ポイントとなります。
反対に、
自分から販売目的をもって店に出向いて、
お店で購入したり
カタログやネット画面を見ながら
おこなう申込みは、
じっくり考えてから
契約を決めることができるため、
クーリングオフの対象にはなりません。
【クーリングオフの適用取引は7つ】
特定商取引法に基づく、
クーリングオフの適用対象取引は、
次の7つです。
①訪問販売
事業者が消費者の自宅や部屋に訪問して、
商品やサービスの提供、販売をおこなう取引で、
いわゆる押し売りといったものです。
代表的なものとしては、
キャッチセールスやアポイントメントセールス
などがあげられます。
②通信販売
新聞や雑誌、ネットなどの媒体で
広告宣伝をして、
郵便や電話、メール
といった通信手段によって
申込みを受ける取引です。
インターネットオークションもこれに含まれます。
③電話勧誘販売
電話で勧誘し、
申込みを受けるものとなります。
電話でのやり取りを終えた後、
消費者が郵便や電話などによって
申込みをおこなう場合も
これに該当します。
④連鎖販売取引
個人を
販売員やスタッフとして勧誘して
さらに次の販売員やスタッフを勧誘させる
というスタイルで組織拡大して
商品・役務(サービス)を提供する取引で、
マルチ商法
との呼ばれ方で認知されています。
取り引き目的がもっぱら
「金品の受け渡し」となる場合は、
一般的にねずみ講(無限連鎖講)
と呼ばれる取引となります。
⑤特定継続的役務提供
長期・継続的なサービスの提供に対して
高額の対価を約束する取引をいいます。
6つのサービスが対象です。
⑥業務提供誘引販売取引
「この仕事を提供するから、稼げますよ」
といった口実で誘引し、
その仕事をおこなうために
必要だとする商品などを売って
消費者に金銭負担を負わせる取引です。
⑦訪問購入
事業者が消費者の部屋や自宅へ訪問して、
物品の購入を目的に取引します。
①が販売や提供を事業目的
とするのに対して、
この取引は購入を事業目的
とします。
【さまざまなトラブル事例】
国民生活センターには、
さまざまな販売や取引の手口において、
消費者からさまざまな相談や苦情が
寄せられています。
<国民生活センター:消費生活相談概要より>
当事務所でも、
次のようなご相談事例がございます。
①SNSからのアポイントメント
SNSの友だち登録で消費者に近づき、
実際に会う約束を取り付けて、
食事後に店舗に誘導のうえ協力者と合流させ
エステや化粧品、アクセサリーなどを
強引に販売
します。
②ショートムービー出演向けレッスン
繁華街で若い消費者に接近し、
「あなたのように魅力的な人なら
ムービーに出演できます。」
と言って、
ショートムービーへの出演をスカウト
します。
その後、事務所に招き、
最終的には
基礎演技レッスンの受講を強く勧める
ものです。
レッスンが終了すれば、
ショートムービー出演の可能性をにおわせ、
今度は高額のレッスンの契約を迫る
という、典型的なキャッチセールスです。
③日帰りツアー
中高年の女性消費者をターゲットにして、
自宅に近いスーパーや銭湯、商店街などに
好みに合わせた
観光地や写真を掲載した広告を設置、
観光地巡りやショッピングをツアー目的
として
抽選はがきで応募を募集します。
当選した消費者が
紹介されたツアー内容を楽しめるのは
最初の短時間だけで、
大部分の時間は
消費者が興味を引くような
貴金属や、ブランド品、健康機器などを
「今だけ特別に大幅割引です!」
とうたって巧妙に販売し、
その場で契約書へのサインをせまります。
④戸建て住宅のリフォーム
老朽化した家屋のリフォームや、
保有するマンションのリノベーションが
近年ブームとなっていますが、
こうした不動産関連案件を、、
家の修繕費用数十万円から数百万円
の支払いを
ご高齢の世帯主さまにせまる訪問販売
です。
【クーリングオフの適用期間】
クーリング・オフが認められる期間は、
7つの取引のどれかによって分かれます。
契約書にサインをしてしまった後でも
取り消せる場合はありますので、
あせらずに対応したいところです。
【クーリングオフの方法】
クーリングオフは、
契約締結後からの適用期間内に
消費者の方から事業者に対して
申込みの撤回や契約の解除の意思を
必ず書面で通知します。
書面の送付方法は、
特定記録郵便や簡易書留、内容証明郵便
といった郵送が一般的です。
契約書にサインした日付から適用期間内に
郵送手配し、
郵便局の受領印をもらいましょう。
また、
2021年の特定商取引法改正により、
2022年6月以降は
メール送付もOKとなりました。
郵送やメール送付を確実に対応したことを
証拠として残すため、
はがきや郵便物のコピーや
メール文のスクリーンショット
を控えておくとよいでしょう。
配達証明付きの内容証明郵便にすれば、
配達状況を追跡でき、
意思表示の証拠として確実と考えます。
サインした契約書に、
電磁的記録によるクーリングオフの
通知先や通知方法が記載されているかも
合わせて確認すべきです。
クレジット決済を含んだ契約の場合は、
事業者のほかに、
クレジット会社にも同時に通知
しましょう。
通常の翌月一括払い(マンスリークリア)
の場合は、
現金払いと同じ扱いになるため、
上記の方法で通知し、
クレジット会社に対しては、
支払ストップの連絡または返金依頼をしますが、
分割払いやボーナス一括払いの場合は
割賦販売法の対象となるため、
信販会社(クレジット会社)に対して
クーリングオフを通知します。
これによって、
販売契約会社との契約も
自動的に解除できます。
ちなみに、
事業者が
一方的にクーリングオフ通知方法を
不合理な方法に限定したり
拒否するなどの対応をとった場合、
クーリングオフの方法を制限する
消費者に不利な特約に該当し、
その
制限を定めた契約条項は無効
になります。
※ほかに、
⑤の特定継続的役務提供の場合
中途解約ができる場合があります。
【クーリングオフの注意点】
クーリングオフで
まず気を付けなければならないこととしては、
取引パターン別の適用期間を守る
ことが必要です。
クーリングオフ適用期間の起算日は
契約書の「受領日」「締結日」
で、
商品受領日、代金支払日ではない
ことに、注意しましょう。
また、
②通信販売は
クーリングオフが適用されません。
通信サービス契約を定める電気通信事業法に
クーリングオフの規定がないためです。
もし返品規定などを
事業者から事前に渡されている場合は、
その記載内容ををよく確認しましょう。
購入した商品をすでに受領した場合、
事業者は
消費者から受け取った代金を返還すべき義務
を負います。
=届けた商品を引き取らなければなりません。
これを反対に解釈すると、
事業者が
無理やり商品を納入しようとしても
消費者はその受領を拒否でき
事業者のうそやおどしなどの
妨害行為がある場合も
事業者からの書面と説明によって
その妨害が解消されるまで、
いつでもクーリングオフできます。
※商品の一部使用や、工事完了後でも
適用期間内であれば
クーリングオフOKです。
ただし、
次の条件に該当する場合は
クーリングオフができません。
※電力小売の自由化にともなって
2016年4月以降の電気供給契約は
クーリングオフ対象となりました。
また、
特定商取引法の定めるクーリングオフ制度に
なじまないとして
次の商品やサービスも対象外となります。
【泣き寝入りしないために】
消費者を不当な商売から守る、
クーリングオフ。
この制度には
適用できる取引と期間が定められています。
万が一、適用が難しい場合でも、
強引に契約をさせられたケースや
「間違いなくもうかります」
などの不確実なトークで
契約させられた場合は
民法や消費者契約法といった
別の法律にも適用でき、
契約解除ができる場合があります。
※そのほか、
次の取引もほかの法律によって
契約解除可能です。
生命・損害保険契約:8日間(保険業法)
宅地建物取引:8日間(宅地建物取引業法)
投資顧問契約:10日間(金融商品取引法)
冠婚葬祭互助会契約(業界標準約款)
悪徳商法に丸め込まれてしまった
これってクーリングオフ使えるんじゃない?
クーリングオフができるかどうかわからない
適用期間過ぎちゃったけどどうしよう?
適用したいけど書面なんて作ったことない
そんな消費者の皆さま。
WINDS行政書士事務所が
クーリングオフにおける書類作成、
リーガルチェックなどの対応サポートを
させていただきます。
どうぞお気軽にご相談ください。