コラム

【免許なくていいの?】電動キックボードの法改正

2023.03.15[行政書士・業務]




【電動キックボードの法律が変わります

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
街中では車やバイクよりも小回りが利いて、
騒音や排気ガスもない、電動キックボード。
現在は購入のほか、
シェアリングサービスを利用する方を
多く見かけたりと
非常に便利な移動手段として定着してきました。

電動キックボードは、
法律上、車やバイクと同じように取り扱われ
免許が必要でしたが、
この夏からは法改正によって、
免許のいらない車両タイプが新たに加わり、
より使いやすいツールになります。

モビリティーとしてのスペックをはじめ、
利用や走行にあたってのメリットや注意事項を
法改正ルールにしたがってご紹介します。




【新ルールはいよいよこの夏から】

電動キックボードに関わる法律として、
道路交通法
が存在しますが、
2022年4月27日
国会でこの法律の改正案が可決

されました。

この改正にしたがって、
電動キックボードの新ルールは
2023年7月1日より
適用されます。


2023年3月現在、
電動キックボードは、
2種類の車両にカテゴライズされ、
電動バイクやスクーターと同じ
ように扱われています。
そのため、
運転免許証が必要となっており、
走行できる場所も車道だけ
となっています。

こうしたルールが
ある条件付きで緩和されることになります。

その条件というのは、
電動キックボードと定義される車両に
新たに加わる
特定小型原動機付自転車
(=特定小型原付)

にあります。

つまり、

対象モビリティーの現行ルールに
スペックの違うモビリティーが追加され
新ルールが追加される


と考えて、問題ありません。




【新ルールの鍵!特定小型原動機付自動車】

これまでの電動キックボードは
ほとんどのものが一般原付
またスペックによっては普通自動車

に該当するもので、
最高速度も30km/hまで
と定められていました。

今回の法改正で、
これらに加えて
電動キックボードと認められる
モビリティーが
特定小型原動機付自転車
(=特定小型原付)

です。

特定小型原付は、
一般原付と軽車両の間にカテゴライズ
され、
車体のサイズや保安パーツなどの
諸条件も詳細に定義されています。
次の表のように
一般原付とくらべてみると
その違いがわかりやすいです。



これらのスペックに
あてはまるモビリティーはたとえ、
電動キックボードの形をしてなかったとしても
特定小型原付として扱われます。

特定小型原付の1番の特徴としては、
最高時速が20km/h以下
という、
スピードが制限されるモビリティー
であることです。

20km/hというのは、
マラソンのトップランナーの
走行スピード(20.8km/h)
に次ぐ速さです。

主婦の方を中心に良く利用されている
アシスト電動自転車は
24km/hまでアシスト設定

されています。

これらを考えると、
特定小型原付の出せるスピードは
ちょっと物足りないかも

と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、
どの世代の方がどのシチュエーションでも
比較的運転しやすい速度
であるような感覚も確かです。

※各パーツの視認性に関わる、
 後写鏡(ミラー)や番号灯は設置不要です。
※電動一輪車のような電動モビリティーは
 保安パーツが設置できないため、
 特定原付としての公道走行はNGです。





【法改正!電動キックボードの新ルール】

電動キックボードの運用ルールは
現行ルールに加えて、
特定小型原付のための新ルールが追加
されます。
新ルールは現行ルールよりも
大幅に緩和
されており、
より身近なツールとして
電動キックボードを使用できそうです。

夏から追加となる新ルールは、
最高速度の制限のほか、
次のようなものが予定されています。



<警察庁:法改正ルールの概要>


①対象年齢
特定小型原付で走行する場合にかぎって
対象年齢は16歳からに引き下げ
られます。
つまり、
スペックを限定すれば
16歳から電動キックボードに乗れる

ということになります。

②運転免許証
これまで電動キックボードは
一般原付や普通自動車
としてカテゴライズされていたため、
原付走行が許される免許
(普通自動車免許、原付免許など)
が必要でした。

(道路交通法84条1項)

しかし改正ルールでは、
特定小型原付であれば
免許なしで乗ることが認められます。


これについては、
車道走行するために免許は必須ではないのか
という一方、
かぎりなく自転車扱いに近いのだから
免許はいらないだろう

など、
法改正においてもっとも賛否が分かれた
と言われています。

③ヘルメットの着用
現行ルールでは、
電動キックボードで走行するために
ヘルメットの着用が義務付け
られています。
(道路交通法71条の4第2項)
これに対して、新ルールでは
ヘルメットの着用は努力義務
となるため、
ノーヘルメットで電動キックボードに乗っても
交通違反にはなりません。
加えて、
特定小型原付に乗るのであれば、
着用するヘルメットの規格も自由

となります。
利用する人にとっては
通気性が良いものや好きなデザインなど、
自由に選ぶことができますね。
ただ、
走行上の安全性を考慮して
ヘルメットの着用は強く推奨される意向

です。

④走行場所
新ルールでは、
特定小型原付に乗って
車道や路側帯の走行が認められます。
が、
走行場所によって
出せる最高時速が変わります。


まず、現行ルールに加えて
歩道が走行OKとなります。
ただし、
特定小型原付であることに加え、
2つの条件が付いてきます。

ひとつは、
走行スピードです。
特定小型原付で
歩道を走行するときは

最高速度は6km/hまで

に抑えなければなりません。
新たに
電動キックボードに加わった
特定小型原付に
歩道で走行できるスピード区分
が設けられたことは
今回の法改正の目玉のひとつ
といえます。

もうひとつは、
識別ライトというもので、。
「今、このキックボードは
 歩道通行できるモードにしてます」

という、
周りに歩道走行モードをアピールする
グリーンのライト

です。

特定小型原付が
歩道を走行するときには

その車体にある
識別ライトを点滅させて周りに表示
しなければなりません。

車道や自転車レーン、路側帯
を走行するときは
識別灯を通常点灯
させます。
このとき、
最高時速は20Km/hとなります。
これに対して、
歩道走行するときは
識別灯は通常点灯ではなく、点滅
させます。
このとき、
最高時速は6Km/hとなります。

つまり、
識別ライトで
通常モードと歩道走行モード
のどちらかに切り替えるにしたがって
最高時速も自動的にスイッチ可能

となります。



ここまでをまとめると、
電動キックボードで歩道を走行できるのは、
最高時速6kmまで
識別灯火で歩道走行モードにした
特定小型原付オンリー

ということになります。

7月以降
個人で電動キックボードに乗る場合は
一般原付タイプと特定小型原付タイプ
どちらかを選んで
それぞれのルールにしたがって走行する

ことになります。
どちらのタイプが自分に合うか
よく検討したうえで購入するようにしましょう。
※今回の道路交通法改正によって
 電動キックボードの運用以外にも
 自動配送ロボットやシニアカーなど
 さまざまなモビリティー規制緩和が
 予定されています。

 警察庁:有識者検討会報告書概要




【法改正によるメリット】

特定小型原付ルールの追加によって
大きく次の3つのメリットが期待できます。

①新しい交通手段
免許不要の特定小型原付であれば、
たとえば
自動車免許を返納した方や
足が不自由な方などの
新たな移動手段

として活躍が見込めます。
自宅から長距離のある学校や職場に
毎日通学、通勤するための選択肢
となるかもしれません。

②手に入れやすい環境
免許もヘルメットもいらない
特定小型原付であれば、
比較的お求めやすく、手軽に使用ができそう

ですので、
電動キックボードの利用割合が
現在よりもさらに上がることが
想定されます。

もちろん、
モビリティーが行き交う場所は
交通トラブルのリスクもあり、
ヘルメットの着用は
強く推奨されていますので、
安全面を考えて、
できるだけ自発的に
ヘルメットは着用したいですね。

③走行モードと走行場所のスイッチ
特定小型原付の場合、
一定の条件を守ることで
走行モードの設定を
車道モードと歩道モードに切り替え可能

となり、
一般原付では実現できなかった
ユーティリティ的なツール
としての活用が期待できます。




【シェアリングサービスも充実】

ところで、
法改正ルールのスタートを
この夏に控えている現在でも、
ノーヘルメットの状態で
電動キックボードに乗っている人を
街中で見かけることがあるかと思います。

これは、
政府の実証実験で認可されている
シェアリングサービスとして
使用されている電動キックボードだけ

ヘルメットを着用しないで
運転を認められているためです。

※現在、次のような国内企業を中心に、
 シェアリングサービスが
 展開されています。

 ⇒LUUP社:LUUP
 ⇒
Curious Edge社:movicle
 ⇒
mobby ride社:mobby
 ⇒
BRJ社:Bird
 ⇒
eBoard社:eBoard

現行ルールで
電動キックボードの利用を
個人所有とする場合と
シェアリングサービスの場合の違いを
比較してみました。



ちなみに、
今年7月以降は、
特定小型原付カテゴリーに該当する
電動キックボードであれば
個人所有、シェアリングサービス
どちらであっても、
新ルールが適用されます。





【電動キックボード利用の注意点】

法改正ルールのスタート前後で
電動キックボードの利用にあたっては、
注意すべき点があります。

①年齢制限
だれでも電動キックボードに乗れる
というわけではなく、
選ぶモビリティーで
免許がいる、いらないに関わらず
16歳以上
という年齢制限が定められていることを
覚えておきましょう。

②走行モードの切り替えタイミング
特定小型原付の場合
歩道走行モードについては
走行中に切り替えは認められず、
一度止まってから切り替えが必要

となることには、注意が必要です。

③ナンバープレートは絶対
免許が不要な特定小型原付
であったとしても、
車両ナンバーの取得手続きをおこない、
ナンバープレートを付けなければなりません。

車両ナンバーの取得手続きは、
住所を管轄する市区町村役場で
無料でできます。
電動キックボードを購入するタイミングで、
忘れずに手続きしましょう。

④保安パーツはそろえる
自動車やバイクが
車検に通らないと公道走行できない
のと同じように、
どのカテゴリーの電動キックボードも
公道を走行する場合は、
保安基準を満たさなければいけません。

保安基準とは、
公道を安全に走行できるための装置が
ついているかどうかの基準で
この基準を満たすためには、
次のようなパーツの設置が必要です。
(道路運送車両法第40条から第46条)


※このほか、ナンバー灯(番号灯)がありますが、
 最高速度19km/h以下は設置不要です。
※前照灯は要自動点灯となります。


これらのパーツがひとつでも欠けていると
保安基準を満たさず、公道で走行できない

ので、注意しなければなりません。

特に、
インターネット上で販売展開されているような
海外輸入モデルは
必要パーツが付いていない
のを多く見受けられます。

公道走行において交通違反にならないよう、
保安基準を満たすモビリティーに整えましょう。

<国土交通省:特定小型原付スペック確認制度>


⑤出せる速度が制限される
これまでの
電動キックボードのモビリティーは
一般原付がほとんどであったため、
最高速度は30km/hまで
と定められていましたが、
今回加わった特定小型原付
最高速度20km/hまで以下となります。
さらには、
スピードリミッターを付け
21km/h以上のスピードが出ないように
制御される
ことも義務付けられます。

ただ、
スピードが出過ぎることで
道の凹凸でのハンドル操作ミスや
事故リスク
を考えると、
より安全に利用するためには適切な最高速度
なのかもしれません。

また一方、
車道の左側を走行するシチュエーション
を考えると
たった時速20km/hでは
ほかの自動車やバイクなどの
スピードの流れに乗れなさそう

とも想像できます。
交通量の多い通りを避ける
など、
安全走行のための工夫
も考えた方が良さそうですね。

⑥交通安全はエチケット
これまでは免許証必須であったため、
電動キックボードに乗る人も
交通ルールを理解してルールを守る
意識を強く持てる仕組みがありましたが、
今後免許が不要となる
特定小型原付では
交通ルールを知る機会が少なくなり
交通ルールがわからなかったり
理解が曖昧な状態で運転するリスク

があり、それゆえに、
ほかのモビリティーとの
交通トラブルに巻き込まれるおそれ

も高まります。
※特殊小型原付タイプの
 ナンバープレートは非常に小さく、
 ドライブレコーダーや肉眼で
 認識しにくいのでは
 との指摘もあります。
 ⇒
SWALLOW社のツイート

<警察庁:電動キックボードの交通トラブル状況>



現在も、免許証の有無については、
賛否両論がある事実も踏まえて
走行するように心掛けるとともに
関連団体の主催する講習や安全教室など、
最低限の交通ルールを守れるように、
交通安全についての勉強や理解を
得る機会を探してみましょう。
JA共済:交通安全百科事典

⑦保険の加入
電動キックボードを、
車と同じ車道で走行する場合、
努力義務ではあるものの、
ヘルメットの着用は強く推奨されます。
ヘルメット非着用時の致死率は
着用時と比べて約3倍も高くなる
というデータもあることから、
改めてヘルメット着用の重要性
を思い知らされますね。

<警察庁:ヘルメット着用のススメ>


こうしたリスクに備えるべく、
自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)
への加入義務も現行ルールと同様必須

となりますので
電動キックボードの購入と同時に
忘れず保険に加入しましょう。



 
ますます身近に!電動キックボード

道路交通法の改正で、
電動キックボードには
新しい車両カテゴリーが加わり、
この夏からは
比較的利用しやすい運用ルールとなります。
また、
現行の2カテゴリーの電動キックボードも
今までどおりのルール運用となります。
この春からは
新ルールスタートの過渡期に入り
誤解も含めて
ルールについていろいろな情報があふれる
ことになると予想します。

出せる最高速度には違いがありますので、
たとえば、

ある程度の距離を
スピーディーに移動したい場合は
公道走行可能な一般原付基準タイプ。

また、
近所でお散歩程度の距離を
まったり移動したい場合は
特定小型原付基準タイプ。


といったように、
用途に応じたモビリティーの利用を
検討できそうですね。

ちなみに、
このコラムを書いている2023年3月現在は、
改正ルールはまだスタートしていませんので、
今すぐ電動キックボードを運転する場合は
運転免許証とヘルメットを必ず持ちましょう。

また、法改正に関わらず、
電動キックボードの利用においては
正しくルールを確認のうえ、
安心安全に、スマートに
電動キックボードを利用したいですね。