コラム

【海外から日本に赴任】企業内転勤VISA

2023.07.26[VISA]





【複雑な要件がからみ合う就労VISA】

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
外国人が中長期間、日本で仕事するためには
就労VISAが必要ですが、
なかには、
海外にある会社から
日本にある会社に異動、転勤

となる在留ケースがあります。

そんなときに外国人が取得すべきVISAが、
今回ご紹介する、
企業内転勤VISA
です。

海をまたいだ企業の人員配置にも関係する
このVISAの取得は
グローバルなビジネスアクション
にもつながりますが、
複雑な要件ゆえに
法人のお客さまから
多数のお問い合わせやご相談をいただきます。
今回は、
取得要件やビジネス上の影響などをまじえて
詳しく解説します。




【企業内転勤VISAとは?】

企業内転勤VISAは、
海外にある事業所から
期間限定の転勤、出向によって
日本の事業所で就労する外国人
が取得すべき就労VISAのひとつで、
最近では
海外本社や関連会社の正社員の日本赴任
のほか、
工場から専門職や技術者の呼び寄せ
なども該当します。

フィットする業務内容としては、
海外の事業所で担当してきた業務に関連
することが必要です。

企業内転勤VISAは、
新たな外国人の雇用目的よりも、
より確実な事業展開、事業発展のため、
自社や関連会社に所属し実績のある優秀な人材
の日本での就労が大きな目的となりますので
外国人の学歴が問われない
といったメリットがあります。
※企業内転勤VISAを含むVISAの種類
 については、
 
こちらのページでご紹介しています。

企業内転勤VISAの要件は、
非常に複雑な定義が複数用意されていますので、
着実に要件をクリアできる
赴任計画の策定が大切といえます。




【企業内転勤VISAの対象業務】

企業内転勤VISAを持つ外国人の担当業務は、
どのような業務でも認められるわけではなく
基本的に、
技術・人文知識・国際業務VISAと同等の業務
となります。
当然ながら、
工場のライン作業などの単純労働にも
従事させることはできません。

※技術・人文知識・国際業務VISAの対象業務
 については、
 
こちらのページでご紹介しています。

もし転勤先での担当業務が
技術・人文知識・国際業務VISAと
同等でない業務

であったり、
海外での会社での担当業務に関連しない

場合は、
法定外業務
となり、
雇用主である企業は不法就労罪
転勤者である外国人は資格外活動罪
に問われるおそれがあります。





【技人国VISAとの関連性】

企業内転勤VISAを取得する外国人
の担当業務が基本的に、
技術・人文知識・国際業務VISAの該当業務
にフィットしていなければなりませんが、

そもそも、取得するVISAは
企業内転勤VISAじゃない方がいいの?
技術・人文知識・国際業務VISA
じゃダメなの?


との問い合わせをよくいただきます。

この結論としてはやはり、
転勤実態のケースバイケース
で取得すべきVISAを選ぶべき
と言えます。

たしかに、
VISA申請に提出する資料収集のうえでは
技術・人文知識・国際業務VISA
の方が
スタンダードな要件として確認しやすく
融通が利く
という考え方もあるのですが、
一般的な就労VISAとは違って、
限定された日本での就労期間
自社または関連会社に貢献する人材

に関わるVISAとして
ひいては
現地法人とともに
ビジネスの発展を見据えている

という面によりかなっているのは、
企業内転勤VISAと言えます。

また、
学歴不問という特徴を活用でき、
企業内転勤VISAの許可実績を得ることで
次回以降のVISA審査に有利

となるでしょう。

その一方、
現地法人と日本法人の関係性の立証が必要
であることから、
技術・人文知識・国際業務VISAとは異なる
書類の提出が求められ、
審査期間も若干長い傾向となっています。
出入国在留管理庁:在留審査標準処理期間

こうした要素を総合的に考慮しつつ、
日本法人側が外国人を招へいする場合は、
転勤内容に応じて取得すべきVISAを検討する
ことをおすすめしています。

また、企業内転勤VISAは
あくまで転勤者のために用意されたVISAのため
転職はNGとなりますので、
転勤後に退職し、日本で転職する場合は、
別のVISAに変更しなければならない

ことに、注意したいところです。

技術・人文知識・国際業務VISAと企業内転勤VISAを
一覧にして比較してみました。






【ほかのVISAとの関連性】

技術・人文知識・国際業務VISA以外の
VISAの該当業務では、
企業内転勤VISAは取得できない
のでしょうか?

結論としては、
ほかの就労VISAにフィットする業務でも
企業内転勤VISAの取得は可能

ではありますが、やはり、
ほかのVISAの取得を第1優先で考えつつ
転勤実態をふまえて
取得すべきVISAを検討した方が良い

でしょう。

当事務所でのサポート事例としては、
次のようなVISAが取得検討対象となりました。






【企業内転勤VISAの在留期間】

企業内転勤VISAの在留期間は、
次の4種類のいずれかになります。
VISAの許可の際に付与される期間
については、
決して申請した希望どおりになる
とは限らず、
次のような決定ポイントを踏まえつつ、
企業規模や安定性などが
総合的に審査され、最終決定します。


※所属機関のカテゴリーについては、
 以前のコラムで詳しくご紹介しています。
 ⇒
こちら

たとえば、
最短在留期間の3ヶ月の場合は、
関連会社間での知識やノウハウ、情報の共有

技術力アップ研修の一環とする呼び寄せ
などに有効ですが、
手続き負担を最小限に抑えるのであれば
短期滞在VISAを選択することもOK
です。




【注意要件①「転勤」】

企業内転勤VISAの
一般的な取得パターンは
海外企業勤務の外国人が
日本の支社やグループ会社に
転勤・出向
することでしょう。
そのため、このVISAには、
転勤や出向の決定証明が必要です。
そこでおさえておくべきなのが、
日本のVISAルールにおける転勤や出向
ではないでしょうか。

通常、転勤や出向の話を耳にすると
同じ会社内の人事異動
がイメージしやすいと思いますが、
企業内転勤VISAの場合は、
次の異動パターンが該当します。

①本支社(店、営業所・事業所)間の異動
本支社間、
本社から日本の営業所などの事務所への異動は
企業内転勤VISAでも一般的な異動パターンです。

たとえば、
日本法人が海外拠点としての現地法人
オフショア拠点と呼ばれます)を設立し、
事業開発後に開発責任者を日本法人に招聘
あるいは
海外本社から日本の駐在員事務所への転勤
もこの異動パターンとなります。
※駐在員事務所とは、オフィスとは違い、
 駐在先の国での情報収集・市場調査・広報活動
 を目的とする事務所で、
 法人登記手続き、法人税の支払いが不要で
 自由に設置できます。


②親会社と子(孫)会社間の異動
①の類似パターンとなりますが、
親子会社間の異動も対象の異動パターンです。
この場合、
親会社が子会社の議決権の過半数を持っている
ことが必要です。

③子会社と孫会社間の異動
子会社から子会社の子会社、つまり
子会社・(親会社から見て)孫会社間の異動
対象異動パターンです。

④子(孫)会社間の異動
子(孫)会社間の異動
も、対象異動パターンのひとつです。
ただし、ここで注意したいのは、
ひ孫会社間の異動は原則企業内転勤VISAの対象外
となることです。
※親会社が
 ひ孫会社まで一貫して100%出資している場合は、
 ひ孫会社とはならず、
 親会社のみなし子会社として認められます。


⑤関連会社への異動
親会社から関連会社
子会社から子会社の関連会社

への異動も対象異動パターンです。
ここでいう関連会社とは、
親会社が議決権の20%以上持っている会社
となります。

一方、
関連会社間
親会社と「子会社の関連会社」間
業務提携契約だけの締結会社間の異動は
企業内転勤VISAの対象外

です。

また、
転勤先からさらに別の事業所に異動の場合は
さらなる転勤に該当し、
企業内転勤VISAの要件をクリアできない

のですが、
海外の会社または転勤先による異動命令
が出ているのであれば、
実質的に海外の会社からの転勤と変わらない
と判断され、要件をクリアし得ます。
⇒当事務所までご相談ください。




【注意要件②「関連業務経験」】

一方、企業内転勤VISAの要件のひとつとして、
外国人にも満たすべき要件があります。
それは、
転勤の関連性がある海外の会社での
1年以上の実務経験

です。

これは、海外法人での勤務期間中、
さらに関連会社間で転勤をしていた場合
たとえば、
現地のA支店で3か月間勤務後
現地のB営業所に異動して9か月間勤務

といった場合でも、
合算して要件の1年実務経験をクリアします。

しかし、
残念ながら1年の実務経験がない場合は、
学歴や職歴で一定の評価を条件に
企業内転勤VISAではなく
技術・人文知識・国際業務VISAを目指すべき

と考えます。




【注意要件③報酬】

企業内転勤VISAの許可要件のひとつとして、
労働契約上
転勤者の報酬や給与、手当が日本人と同等以上

であることが必要です。

報酬や給与額は、
エリアごとの最低賃金
に加え、
業界や業務によっての違いが予想されるものの、
まずは月額18万円以上となるか
が基本目安と考えられます。
もし転勤者の報酬や給与額が
この目安額未満となる場合は、
その額が妥当であることを
証明しなければなりません。

また、報酬などの支払者は、
転勤先の企業に限らず
転勤元の企業としても、
現地法人、日本法人のどちらかからとして
両方からでもOKです。




【注意要件④家族の帯同】

企業内転勤VISAの許可を受ければ、
転勤者の配偶者と子どもまで
の範囲にかぎって、
家族を帯同することができます。

帯同する家族は
家族滞在VISAを取得することができます。

それ以外にあたる、
転勤者や配偶者の両親、兄弟姉妹、
そのほか親族は帯同が認められません。





【ヘッドハンティングの可能性】

企業内転勤VISAにおけるご相談として
ほかに当事務所に多く寄せられるのが
企業内転勤VISAの取得をもっての
ヘッドハンティングができる可能性

があります。

たとえば、
現地の関連会社で就労する人材や
企業内転勤VISAを持ち取引先で就労する人材を
日本の会社へヘッドハント

といったケースです。

これに関しては、
企業内転勤VISAの要件をクリアする限りは
入管法上可能

と言えますが、
解説しました4つの要件がハードル
となるでしょう。
また、ヘッドハンティングになれば
所属する会社が変わる=転職
にも直結します。

雇用契約の実態を考えると、
技術・人文知識・国際業務VISAがベター
仮に企業内転勤VISA取得の方針の場合は
ふたつのVISA(企業内転勤VISA
+技術・人文知識・国際業務VISA)
両方の要件をクリアしなければならない

ことに、注意しましょう。




【複雑な要件チェックは専門家におまかせ】

企業内転勤VISAは、
優秀な人材を日本のオフィスに受け入れ、
企業のグローバル化に最大限対応できます。
新たな人材雇用に比べて
採用コストを抑えられ
子会社や関連会社から即戦力を得られる
メリットは大きいでしょう。
一方複雑かつ高い要件から、
フィットするかの判断が難しく
取得VISAの判断に迷う事業者さまも多いです。

WINDS行政書士事務所は、
個別の事業展開に合わせて、
各就労VISAの取得可否や転勤後の対応方法など、
幅広く提案いたします。
転勤向けのVISAを検討する場合には、
VISA許可実績の豊富な当事務所に
是非ご相談ください。