コラム

【居住用と別次元!】オフィス物件の賃貸借契約

2023.11.29[契約]





【オフィスにはオフィス向けの賃貸借契約】

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
コロナ禍以降、
リモートワークも浸透、定着してきていますが、
企業の経営にはやはり、
店舗やオフィスは不可欠と言えます。
事業者が店舗やオフィスを構える際に
確保する物件は賃貸物件がほとんど
を占める傾向です。
ここで登場するのが、
今回ご紹介する、事業用建物賃貸借契約です。

物件の使用目的が
住居ではなくビジネスであることから
この契約においては
さまざまな配慮を凝らして要件を設定し、
当事者間で合意、確認が必要となります。
肝心の契約書に重要条項が抜けていたり、
一方の当事者にだけ有利な内容となっていると、
トラブル発生時に当事者が
思いもよらないダメージを被るおそれがあります。

借主になってオフィススペースを借りたい
所有の建物で貸主として賃料収入を得たい


こうした当事者の想いからはじまる
この契約における重要ポイントを、
契約書リーガルチェックのプロとして
あますところなく解説します。




【事業用賃貸借契約とは】

事業用建物賃貸借契約とは、
ビジネスで使用される建物の賃貸借契約です。

借主の使用目的であるビジネスといっても、
その用途は、
オフィススペース
店舗
作業や工房
工事場所

など多岐に渡り、
目的に応じて求められる物件の構造や
使用方法が異なります。




さらに、
貸主であるオーナーが要望も重なり、
必要な物件の要件が定まります。



当事者が取り交わす契約は、
普通賃貸借契約
定期借家契約

の2パターンがあります。



契約に関わる法律は、
民法
宅地建物取引業法
借地借家法
などがあります。
このうち、借地借家法は、
当事者として立場が弱くなることが多い
借主を保護する特別法です。
※特別法とは、
 特定の者やシチュエーションに限って
 適用される法律で、
 広く一般的に適用される
 一般法に優先されます。


いずれの契約パターンも、
条件によって契約条項も変化し、
契約書の内容を補足説明するための
添付書類を用意するなどで、
契約書類のボリュームにも差が出てきます。

契約関係上、
借主は貸主ほど強力な保護を
受けられるわけではないため、
契約内容には細心の注意を払うべきでしょう。
対する貸主も、
借主からのクレームなど発生しないために
適切な契約条件を定めることが大切です。




【事業用建物賃貸借契約の契約項目】

事業用建物賃貸借契約で
設定しておきたい契約項目を
リストアップしてみました。



①当事者
賃貸借契約の当事者である、
貸主と借主を特定します。
当事者との間に仲介業者がいる場合は、
契約の相手方と直接コンタクトをとらずに
契約に至ることも少なくありません。
この条項で、
契約の相手方はだれなのか(個人?法人?)
借主のビジネスに関連する利害関係はないか
契約更新時に前契約者からの承継事項はないか

などを、
この条項から紐づけてチェックできます。

②物件情報
契約対象となる物件の特定は非常に重要です。
不動産登記簿を基にして、

所在地
地番
家屋番号
建物の種類
建物の骨組み構造
床面積


などの情報を、この条項に記載します。

記載の方法は、

箇条書き
リスト化
関連資料としての添付


など工夫できます。

③物件の用途
②で特定された物件の使用目的を定めます。
ここで定めた以外の目的で
物件を使用すると契約違反

となり、
物件の使用停止や損害賠償につながります。

④賃料・保証金
契約の対価として借主が貸主に支払う
賃料のほか、
このほか、
借主が貸主口座の振り込み手数料
貸主から請求される場合の水道光熱費
契約開始における敷金や礼金、保険料
家賃延滞の際の遅延損害金
などを定めます。
保証金を定めることもあり、
保証項目や物件に応じて高額設定の傾向
にあります。
イニシャル・ランニングいずれの費用も
支払期日や方法、日割り計算の可否など
も明記します。

⑤契約期間
賃貸借物件の貸し出し期間
を明示します。
居住用物件は一般的に契約期間を2年とする
のに対して、
事業用物件はそれ以上
とする傾向が多いです。
※契約期間に定めのある定期借家契約は、
 賃貸借の限定期間を記載します。


⑥契約更新条件
賃貸借契約の場合、1度契約を結ぶと、
特別な事情や理由がない限り
自動的に契約の更新が可能です(合意更新)
契約の更新においては、
更新合意の確認日や更新料などが記載されます。

ちなみに借地借家法では、
法定更新といって
契約満了日から6カ月前までに
貸主または借主の申し入れがない場合
契約は自動更新
されるシステムがあります。
つまり、
合意更新しないで期間が満了した
としても、
すぐに賃貸借契約が終了するわけではない

ということをあらわしています。

⑦原状回復
契約物件が貸し出され、使用されている以上、
契約満了後の物件は
多少の不具合や傷などが残ることが想定
されます。
この場合の物件の原状回復ルール
を記載します。
通常は借主がこの義務を負い、
遅滞なく物件を契約時のままの状態にして
で貸主に返還

します。

⑧契約解除
貸主が、借主の
用途通りに使用しない
勝手に又貸し(転貸)した
相談、許可なくリノベーションした
契約物件へ激しい損傷を起こした
長期間家賃を払わなかった

などのアクションで、
著しい債務不履行を確認した場合、
貸主は、次のような場合に
催告なしで契約を解除することができる
旨を契約書に記載します。



借主、貸主、双方とも、
事業を展開しているうえで
さまざまな事情というものはつきものです。
たとえば、上記のような事由以外にも
借主の海外転居が決まった
貸主が物件の売却や
自己使用への切り替えを決定した

などの諸事情による中途解約
ということもあり得ます。

<借主からの中途解約>
通常は、契約締結時に
借主による解除権が定められます。
居住用物件であれば、
解約発生日1か月~2か月前までの申し入れ
と定めることが多いのに対して、
事業用物件の場合は、その用途特性から、
3か月~6か月前など、
広めの申し入れスパンで設定する必要性
も考えなければならないでしょう。

借主は建物賃貸借契約の締結前に
契約書の内容をよく確認し、
解約の申し入れ時期貸主との交渉

も検討するべきでしょう。
また、
中途解約による違約金の有無も確認が必要
と考えます。
裁判例では、違約金の設定自体はOK
とされますが、
高過ぎる設定額は、
借主への不利益が著しく、公序良俗に反し無効

とされる可能性があります。

<貸主からの中途解約>
貸主から中途解約を申し入れられるのは、
借地借家法上、以下の場合に限られます。
これらの規定に反して設定された特約は無効
となります。






【事業用建物賃貸借契約でよくあるトラブル】

事業用建物賃貸借契約において
当事者間でよく発生するトラブルを
3つピックアップしました。

①物件用途の認識違い
事業用として物件を貸し出す際には、
借主である事業者によっては
オフィススペースもあれば、
飲食店やヘアサロン、クリニックなど
用途が多岐にわたります。
契約書上で、記載された
使用用途の解釈ずれからトラブルが発生し
当事者間での認識がマッチしないため

解約しようとしても認められない

といったリスクが考えられます。

②原状回復コスト
契約満了後、更新をしない場合は
その用途を問わず、物件の明け渡し時に
借主が賃貸物件の原状回復義務を負う
のが一般的ですが、
事業用物件は
居住用賃貸物件に比べると
原状回復費用が高額となる傾向が高いです。
その現状回復基準が複雑、曖昧になると
トラブルの原因になる
ことがあります。

③中途解約
契約期間満了前に
当事者の一方の都合による中途解約の発生
があり得ますが、
ここで解約後に貸主が
次の借主をすぐ募集したとしても
インターバルなく新たな賃貸借契約を結べる
とは限りません。
もし中途解約の予告期間が短過ぎた場合、
解約した借主が退去後
新たな借主を見つけるまで時間がかかり
その間貸主の賃料収入がストップ

などの貸主ダメージとなることがあります。

これらトラブルパターンに該当しない
ことを踏まえつつ、
事業用建物賃貸借契約における対応策
をまとめたいと思います。




【事業用建物賃貸借契約における注意ポイント】

①対象物件の特定
適切な賃貸借契約を結ぶためにも、
契約対象物件は明確に特定
する必要があります。
当事者のあいまいな記憶や思い込みなどから
フロアや面積、所在地などの
物件情報にずれが出ないよう、
登記簿情報を基に明記しましょう。
建物の構造は、
耐震性や防音性に関わる重要情報です。
契約時に確認する関連資料や
貸主の説明が一致するようにしましょう。

また、注意したいのが、地番情報です。
地番は、土地の登記管理上設定されますが、
建物の住所表示である番地と混同しない
ようにしましょう。

②物件の用途
契約上、定められる使用目的は、
明記するのはもちろんのこと、
借主が展開予定のビジネスとフィット
しているかが重要です。
契約書上、
「オフィス=執務室としての使用を認める」
などの記載があれば、
その物件の用途は限定されることになります。
物件用途を具体的に記載されることによって、
物件や周辺エリアの品位や環境を
一定にキープでき、不測の損害発生も予防

できます。

用途が限定される場合、
借主がその用途と異なる目的で使用すれば
用法遵守義務違反の責任が問われ、
結果、契約の中途解約や損害賠償請求
といったペナルティを下され、
借主のビジネス自体の中断となるおそれがあります。
借主の予定するビジネスが
貸主の提示する用途の範囲内で展開可能か、
認められる具体的な利用方法など
事前にチェックしましょう。

賃借人は、契約又は賃借物の性質によって定まった用法に従い、賃借物を使用収益する義務を負う。 賃借人が用法遵守義務に違反した場合、賃貸人は、債務不履行を理由に損害賠償請求をすることができる。(民法第616条)
借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。(民法第594条1項)


物件用途のチェックにおいて、
契約締結前後に借主が検討すべき点を
ピックアップしてみました。



③適正な賃料設定
事業用建物賃貸借契約は
居住用建物賃貸借契約にくらべて
契約期間が長くなる傾向
が高いです。
契約期間が長いと、
ランニングコストとしての
賃料が適正でなければ
借主のビジネスを圧迫するリスク

が高まります。
借主は
家賃その他の共益費の額が適正かをチェック
しましょう。

一方、貸主の立場としては、
将来の事情変化によって
家賃や共益費を改定する可能性があれば、
当事者間で協議のうえ、
家賃増減の具体的な事情
実際の増減までの据え置き期間の有無

などを、契約条項に明記しましょう。

借地借家法では、
賃料増減額請求権が定められています。
仮に借主から賃料減額請求があった際、
貸主が借主からの賃料減額請求を排除する特約
を設定した場合、
この特約は法律違反として無効
になります。

1. 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、
土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。
ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

2. 建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。
ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。

3. 建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。
ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。
(借地借家法第32条)


また、締結後に揉めないために、
保証金や権利金、保険料
といったイニシャルコストに関しても、
契約書に具体的に記載しましょう。

④契約更新
契約満了時期が近づいてきたとき
当事者間で契約更新の可否を確認しますが、
貸主の事情で
借主に契約を更新しないことを申し入れるには、
契約終了に至る正当な事由が必要です。
また、自動更新設定となっている場合、
借主の解約申し入れが更新時期より遅れた
ときはトラブルとなる可能性もあります。

更新におけるトラブルを避けるうえで、
契約更新を希望しない場合の
申し入れ通知期限
を契約書に明記
しましょう。
また、
書面など通知方法を指定

することで
「知らせた」「聞いていない」
などの食い違い防止に有効です。

⑤建物の明渡しと原状回復
契約を満了すると、
借主は物件の利用を終了し、明渡します。
その際、借主の故意や過失、
その他通常レベルを超えた使用による
損耗や毀損については原状回復義務を負う
のが通例です。
※通常損耗による賃貸目的物の価値減少分
 については、
 賃料収入によってカバーすべき
 と考えられています。


ただ、事業用建物においては、
借主のビジネス展開のために
物件に手を加えることも多いです。
また、
ちなみに
借主が契約後に物件に取り付けた設備、
いわゆる造作物については
借主にメンテナンス義務が発生する
のが一般的です。

賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。(民法第621条)

求められる現状回復のレベル感や
原状回復しない場合の対処方法、費用の負担

契約中の物件メンテナンスの義務や実施頻度
などを事前に合意すべき
でしょう。

借主としては、原状回復に関して
次の項目を事前にチェックしておくことで
想定以上の負担を避けられるでしょう。


※スケルトン渡しとは、
 建物の躯体構造をすべて撤去し、
 天井剥き出し、床は土間、
 間仕切りなしの状態で
 物件を明け渡すことを言います。


事業用建物のなかには、
以前のテナント設備がそのまま残る
いわゆる居抜き物件も存在します。
こうした物件は、
残存設備がどこまで残っているか
ケースバイケースですので、
やはり詳細に確認、情報共有しておく
ことが大切ですので、
明渡し後に残る設備の取扱いについても
契約書に詳しく明記

されているべきです。

※国土交通省では、
 建物の原状回復における標準レベルや費用負担基準を定めています。
 ⇒
原状回復をめぐるトラブルとガイドライン

⑥契約解除
事業用建物賃貸借契約では、
貸主から要求の通知(=催告)をせずに
解除できるよう定めることができますが、
この解除事由に該当するとしても
貸主はすぐに契約解除できるとは限りません。
実際、
契約解除事由と思われるものを
貸主が認識したとしても
実際に債務不履行がない場合は
信頼関係が破壊されていなければ
解除は認められない

との結論にいたった裁判例が多く存在
しています。
信頼関係破壊の法理と呼ばれています。)

どのような用途であれ、
不動産賃貸借契約は、
貸主と借主の信頼関係に基づいて
継続的なとりかわしが想定される契約であり、
契約関係の安定を守るために
解除が制限されています

ので、注意しましょう。

⑦中途解約と違約金
⑥のなかに含まれる中途解約においても、
通常の契約解除とは違う目線で注意が必要です。
契約締結後に
借主で思い通りにビジネスが進まない
借主・貸主どちらかに諸事情が発生した場合

⑥のような解除事由による場合
に中途解約となることがあり、
その際の違約金定められる場合があります。

この中途解約の条項には、
解約の申し入れ期限を必ず設定しましょう。

1 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
一 土地の賃貸借 一年
二 建物の賃貸借 三箇月
三 動産及び貸席の賃貸借 一日

(民法第617条1項)


法律では、上記のように
通知期限が3か月前と規定されてはいますが、
この期間ですと、
貸主が次の借主を募集し新契約の締結に不十分
という理由から期間の調整が必要とされ、
居住用物件では30日前、
事業用物件では6ヶ月から1年が通例

とされています。

違約金については、
設定の有無
設定されている場合は発生ケース

などを事前に協議、確認のうえ、
重要事項説明書などに盛り込みましょう。

また、貸主が急いで新しい借主を募集した場合、
次の借主候補者からの物件内覧希望
が予想されますので、
借主に内覧に関する協力義務
を定めるのも有効でしょう。




【重要事項説明で有効な「特約」】

事業用建物賃貸借契約の締結においては、
さまざまな事情に備えて、契約書に
重要事項説明書を添付するケースが多いです。

宅地建物取引業法上、
宅地建物取引業者業者は、
賃貸借契約成立までの間に
借主に対して書面を交付して
一定の重要事項を説明しなければならない

との規定があります。(第35条)
そのため、たとえ、
借主から「面倒なので説明は結構です」
と申し出があったとしても
説明は省略できない
ことになっています。

こうした重要事項説明書には、
特約を加え、定めることが有効です。
事業用建物賃貸借契約における特約には、
次のようなものがあります。



①管理責任者に関する特約
事業用建物賃貸借契約の
借主が法人の場合
代表者と実際に現場で営業対応する責任者
が異なる

ということがよくあります。
この場合、
緊急・重要連絡事項やトラブル発生の際に、
貸主が借主法人の代表者の連絡先
しかわからなければ、
借主による適切な対応は難しくなりますね。
こうしたシチュエーションに備えて、
特約で管理責任者と役職、連絡先
連絡先が変わる場合の通知期限や方法
などを重要事項説明書上明確にしておく

と良いでしょう。

②造作買取請求を放棄する特約
事業用建物賃貸借契約においては
契約終了時、借主は貸主の同意を得て
物件に設置した
インテリア、エアコン、照明器具、
水周りやカウンター、建枠設備

といった造作物
貸主に買い取るよう請求することができます。
これを、造作買取請求権といいます。

建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに、建物の賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる。(借地借家法第33条)。

貸主は、借主のこの請求を認めると、
その造作物を希望するかどうかにかかわらず
買取費用を負担
することになります。

ただし、
この請求権は任意規定ですので、
貸主がこの負担を回避したい場合は、
借主の造作買取請求権を放棄する旨の特約

を設定すると良いでしょう。

③通常損耗補修特約
事業用建物賃貸借契約においては
もっとも設定が多く見受けられる特約です。

通常使用において物件の一部が損耗した場合
その原状回復義務は借主が負う

という内容の特約となります。
法律上、
この特約の有効性は、
特約の記載内容のほか、
借主に具体的認識と明確な合意の意思
が重視され判断
されます。
※合意の成立を制限的に解釈したうえで
 通常損耗部分の原状回復義務を認めない
 とする判例もあります。


契約書には借主が負担する
原状回復工事の内容を具体的に明記し、
さらに
当事者間で十分に確認のうえ
借主の了承を得る
ことが大切です。

ただ、
借主が取引している業者がいるかどうか
その手配方法を熟知しているか
は未知数
です。
また貸主としても、
一定レベルで安定した工事を目指したい
のではないでしょうか。
そこで、
契約書上で原状回復の規定の際、
そうした事項に詳しい貸主側で
重要事項説明書で
原状回復工事の施工業者を指定

することができます。

④休業補償特約
老朽化に伴う配管工事
電気設備の点検や災害後のメンテナンス

などの理由によって
契約物件を使用できない期間中は
借主が休業せざるを得ない

といったケースが想定されます。

この休業期間が
繁忙期にさしかかったり、長期に渡れば
借主にとって大きな営業損失
となりますが、
残念ながら借主は、
修繕のための休業まで
補償されるわけではありません。


貸主は、
​​​​​​​建物を使用収益させる義務があり、
そのために修繕が必要です。
工事や作業目的が修繕であれば、
得られるはずの利益は、
特約のない限り補償されません。


こうした借主のリスクを回避するため、
貸主が借主の休業を補償する特約
を設定し、
適切であることを合意できる補償責任負担
を定めるとよいでしょう。





【目的を最重視した契約チェックを】

不動産の賃貸借契約でも、
ビジネス目的になれば、
居住用とは別の目線で
合意事項のチェックが必要となります。
それらチェックポイントも、
当事者の事情や希望によって異なるため、
単なるテンプレートの契約書ひな型を転用すると
リーガルチェック不足から
当事者は思いもよらないトラブルに見舞われます。
当事者間で合意事項をよく確認、協議のうえ、
契約書を作成し、サインをしましょう。

WINDS行政書士事務所は、
事業用建物賃貸借契約をはじめ、
ビジネスシーンにちなんだ
さまざまなスタイルの契約書作成、
リーガルチェックのサービスを承っております。
どうぞお気軽にご相談ください。