コラム

【離婚するご夫婦の新たな関係】共同親権

2024.04.17[日々のあれこれ]





【ついに閣議決定!共同親権ルール】

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
さまざまな事情によって、
離婚という決意をされる
ご夫婦がいらっしゃいます。
そんなおふたりにお子さまがいる場合
親権をどちらが持つかを決めていくのは
非常に大切です。

そんななか、2024年3月8日、
離婚後も子どもの親権を双方の親に認める
共同親権を含めた民法改正案が閣議決定
されました。
この改正案が可決されると、
数年後に予定される法律の施行と同時に
離婚後の共同親権ルールがスタートします。
首相官邸:令和6年3月8日定例閣議案件

この共同親権ルールが
本格的に日本いつ導入されるのか
という話題と同時に、
最近は
有名人にまつわるニュースに
この共同親権がキーワードとなっている
などもあり、
共同親権への関心度が高まっている
のも事実です。

今回は、導入を控える共同親権のルール、
メリット・デメリットを
現在の国内外の導入状況もまじえてご紹介します。




【親権とは】

共同親権を知るうえで、そもそも親が持つ
親権を詳しく理解したいところです。

親権とは、
未成年=17歳までの子どもを
成人まで育てるために親が持つものです。
周囲や子どもに対する権利
また一方、
社会的未熟な子どもを保護して
子どもの精神的・肉体的な成長を図る義務

という、両面性があります。

未成年の子どもは、親の持つこの親権に服する
ことが必要で、
原則、親権は父母が共同して行使する
ことになっています。

成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2 子が養子であるときは、養親の親権に服する。
3 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。
(民法第818条)

※2022年4月1日より、成人(成年)年齢は
 20歳から18歳に引き下げられています。
 ⇒
こちらのコラムでも詳しくご紹介しています。

親権は、
大きく分けて以下の2つの内容で構成されています。
これらの権利は、どちらも
子どもの利益のために行使されなくてはならず、
両親には大きな責任が伴います。



本来、この親権は、
婚姻関係にある父と母が共同して持つものです。
しかし、
その父母が離婚する場合、
現行の法律ルールでは
父母は共同して親権を行使することができません。
では、親権はどのようになるのかというと、
父または母のどちらか一方が親権者に指定
されることになります。
これを、単独親権と呼びます。

親権に含まれる②の監護権は、例外的に
親権と別々に定めることもできますが、
原則、同じ親に帰属する
つまり、
親権者(監護権者)となる
どちらか一方の親にだけ、
子どもと一緒に生活したり
教育方針を決定する権利を持つ

ということになります。




【共同親権とは】

今回閣議決定された共同親権制度は、
父と母が離婚しても
婚姻中のときと同じように
未成年の子どもについて
離婚した父と母の双方が一緒に親権を行使できる

ルールとなります。
また、制度導入となっても、
共同親権は離婚する父と母双方の合意による
ものであり、
場合によっては家庭裁判所が
従来の単独親権ルールとすべきかを判断する

運用案となっています。

海外では、
いち早く共同親権を認めている国がありますが、
国際的に見るとまだまだ多くはなく、
その運用も
共同行使できる権利を限定したり
単独親権との選択制を定めていたり
と国ごとに異なっています。


※法務省:父母の離婚後の子の養育に関する海外法制について




【法改正の背景】

日本では、両親が離婚後、
親権者を持つ親の一方的都合によって
父と母が離婚後に取り決めた
子どもとの面会交流が果たされず
子どもと親権を持たない方の親が会えなくなる

という事態が問題となっています。

その場合の非親権者は、父親が多い傾向にあり、
子どもに会えない日常に対して落胆、諦めの結果、
本来、子どもが本来受けられるべき愛情、
十分&健全な養育の機会や資金が失われる

だけではなく、
子どもが親と会う権利をも侵害される
ことになります。

配偶者や子どもへの暴力・DVが発覚する場合は
児童福祉法違反となり、
行政対応・司法判断の下で子どもは保護され、
加害者の自由な面会が制限される
ことになります。

また、先ほどご紹介した、
国ごとの共同親権ルールの違いもあり、
日本の親権に対する考え方が
国際問題も引き起こしています。
たとえば、
海外で国際結婚した夫婦が離婚し
日本人と外国人の間に生まれた子どもを
日本人の親が日本に子どもを帰国させ
一方的に親から離すまたは音信不通となって
子どもとの面会交流を果たさない

というケースが起こっています。
NHKの報道
これが国際条約に違反するとして、
海外諸国が日本政府に対し
ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)
の遵守を求めています。
※ハーグ条約とは、国境を越えた
 子どもの連れ去りや強制的な引き止め
 といった事件が発生したとき、
 子どもを元の居住国に返還する
 という国際的な取り決めです。
 日本はこの条約加盟国です。

 外務省の紹介ページ

これらさまざまな課題を解消するために、
政府は今回、
共同親権の本格導入に踏み切った形です。




【共同親権のメリット・デメリット】
親、また子どもの立場になって考えた場合、
共同親権はさまざまなメリットとデメリットが
考えられます。
次の通りまとめてみました。

1⃣メリット
①親権争い予防or早期解決
現行の法律ルールでは、
離婚時に父または母のどちらかが
単独親権者として指定されるため
父と母の双方が子どもの親権を希望する場合、
話し合いや調停で解決できず
離婚訴訟にまで発展することが多く
解決するまでの時間や労力を要していました。

すぐに解決されず、
親同氏の交流がストップしてしまうと
子どもの精神的ダメージにもつながるでしょう。

共同親権ルールを活用すれば、
こうした親権争い自体がないことから
調停や裁判などが必要なくなり
早期解決が可能
になります。
親権争いによる両親の関係が悪化しなければ、
子どもの精神的ダメージも軽減できるでしょう。

②万全な養育サポート
離婚後の単独親権者としては、
シングルファーザーあるいはシングルマザー
として、子どもを育てる義務や責任を
すべてひとりで抱え込んでしまう

ということが少なくありません。
場合によっては、
これまで築き上げてきたキャリアや
経済的資金にも大きく影響
するでしょう。

しかし共同親権ルールを採用すれば
両親はどちらも親権者として
子どもを育てる義務や責任を持つため
離婚後も協力して子育てができ
どちらかの親に負担が偏ることがありません。

別々に暮らす親の側としても、
定期的な子どもとの関わりをキープできますので、
離婚後の面会交流に関するトラブルも低減
できるでしょう。
なによりも、
子どもが両親からの愛情を感じられる機会
があることで、
子どもが心身ともに健やかに成長できる
と考えます。

③スムーズな離婚協議
単独親権の場合は、
親権を持たない方の親は
取り決めにしたがい、また親権者の許可を得て、
子どもとの面会交流をします。
そのため、
非親権者と子どもの関わりは
離婚前よりも制限されてしまうことが多く
子どもに対する愛情や責任感の薄れ、
養育費の不払い
にも発展しかねません。
しかし、共同親権ルールでは
父と母のどちらも
子どもと関わる権利がありますので、
スムーズな面会交流が実現できます。
子どもと定期的に会えることで
離れて暮らす親も
子どもへの愛情も持ち続けられます




2⃣デメリット
①子どもへの負担

基本的に、共同親権ルールでは、
面会交流が拒否できなくなります
定期的な面会交流となれば、
子どもは一緒に暮らさない親と会うことに
多くの時間を費やし、
予定を合わさなければならないことから
日常生活への負担が懸念されます。
また、
共同親権者間に意見の対立から子どもが板挟み
になる場合、
子どもが離れて暮らす親と会うことを嫌がる
場合は、
子どもの精神的な負担も不安材料
となるでしょう。

②長距離間の面会交流難化
定期的な面会交流を考えると、
離婚した父と母は
一定程度アクセスしやすい場所へ
住まいを構えることがベターでしょう。
反対に、
仕事や個人的都合で
遠方の実家や海外に住む親にとっては、
引っ越し先が課題や制限事項

となってしまいます。

③ハラスメントクライシス
単独親権ルールでは、
親権者が面会交流を拒否できることから、
離婚を境に
非親権者からのDVやモラルハラスメントから
自由になれます。

しかし、共同親権ルールでは、
離婚後もハラスメントをしていた配偶者と
子どものことに関してコンタクトを取り合う
ことになりますので、
再びDVやモラハラの被害を受けるリスク
が発生します。

この点は、政府でも
パブリック・コメントや共同親権反対の院内集会で
度々議論されてきました。
共同親権導入において、
被害者となる親と子供に対するハラスメントの危険
がおよばないよう、制度の整備や配慮は重要で、
本格的な導入までにどこまで整備されるかも課題
となります。

④教育方針意思決定の難航
単独親権ルールでは、
子どもの教育に関する事項について
親権者がすべて単独で決められますが、
共同親権では父と母の双方が親権者として、
お互いが話し合って取り決める必要があります。
もしも、教育方針で対立が発生する場合、
子どもに対しても不利益が生じるリスク

があります。

⑤さかのぼって認められない
共同親権導入前にすでに離婚した夫婦の場合、
単独親権を定めた現行の民法が適用され、
どちらか一方を単独親権者に定めています。
法律不遡及の原則から、
共同親権が導入されたとしても
さかのぼって適用はされず
導入前の単独親権者が
共同親権に変更できるわけではない

ことに注意が必要です。




【再婚したらどうなる?共同親権】

離婚した親権者が子どもをともなって
新たなパートナーと再婚する場合、
その再婚相手は子どもと養子縁組ができます。

未成年の養子は養親の親権に服する。(民法第818条2項)

再婚相手が養子縁組によって親権を獲得すれば、
親権者である実親と再婚相手は、
共同親権者として成立します。

ただ、こうした形の共同親権が成立する場合も、
法律上、
離婚時に非親権者となった親と子どもの
親子関係がなくなることはありません。

面会交流の取り決めをしている場合は、
再婚相手の養子縁組を理由に
面会交流の拒否や中止は認められません。


ちなみに、
養子となる子どもが15歳未満の場合、
子どもの法定代理人である親権者の承諾が必要

になります。
つまり、
すでに離婚した父が共同親権を持つ場合は、
父と母両方の承諾が必要になる
わけです。
もし
一方の共同親権者が再婚を快く思わない場合、
再婚相手の養子縁組に関しては承諾を得られない

というリスクがあります。
これに対しては、
家庭裁判所への申し立てによって、
父または母のどちらか一方の承諾で足りる
旨の決定
をすることができます。




【子どもファーストの制度としての活用を】

海外では
離婚後の共同親権を認める国も
増えてきているなか、
いよいよ日本でも
共同親権の本格導入に踏み出しを見せました。
この共同親権には、
両親の離婚要因や環境から
さまざまなメリットとデメリットが考えられます。
今後、
導入に関わる手続きも整備されていきますので、
今後離婚を検討している方は、
その動向に注目したいところです。

一方、かつて子どもでもあった私が思うのは、

離婚にはさまざまな事情があっても、
子どもにそんな親の事情は関係なく
どの子どもも、幸せになる権利がある


ということです。

離婚後も変わらず、
親の愛情が子どもに注がれることが
親御さんにとっても、
お子さんにとっても、
ひいては社会にとっても、大きな意味を持つ
と考えます。
日本の未来を担う子どもたちが
健やかに大きく成長してほしい
と願うばかりです。