コラム

【廃止の技能実習を受け継ぐ】新制度「育成就労(仮)」

2024.05.29[VISA]





【閣議決定!育成就労(仮)法案】

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
昨年のコラムで、
技能実習制度がなくなる可能性
についてご紹介しましたところ、
監理団体の皆さまから
非常に多くのお問い合わせ、ご相談
を頂いておりました。
その後、2024年に入り、
政府からようやくその答えが明確になりました。
それは、

技能実習制度は廃止
となり、代わりに
育成就労(仮)制度を採用する

というものです。

この春に運用ルールの最終方針が固まり、
閣議決定されたこの法案が、

通常国会(~6月23日)で可決されれば、
2~3年後に施行に進む


と予想されます。


新ルールとなる育成就労の概要と、
気になる技能実習からの切り替わり
についても、
VISAサポート専門家の目線で解説します。




【技能実習の後継ルール「育成就労(仮)」】

昨年から有識者の会議を経て、
新VISAの最終案がまとまり
今年3月で正式に閣議決定された、
育成就労(仮)VISA。

この新しいVISAは、
現在運用中の技能実習VISAの
アップグレード版として創設されます。

開発途上国へのスキル伝達と国際貢献
を目的に
1993年から創設された技能実習ルールは、
実習生や実習機関、監理団体で
さまざまなトラブル
に見舞われている
ことが懸念材料となっていました。

一方、
人手不足の解消という
技能実習ルールと異なる目的を掲げて
2019年より創設された、
特定技能ルールにおいては、
直後のコロナ禍などの影響もあり、
アフターコロナとなる現在において
伸び悩む取得外国人数にテコ入れをすべく
改めての制度見直し
を迫られていました。

こうした状況から、政府は、
昨年より複数回の有識者会議を経て
最終方針を閣議決定した結果、
今回の新制度切り替えに踏み切る
形とし、

特定技能制度は
適正運用を図りながら継続


の方針が固まりました。
※閣議決定された法案は今後、
 国会提出を経て成立し
 数年後には施行され、
 本格的に適用となります。





【公表!育成就労(仮)グランドルール】

閣議決定された育成就労(仮)のグランドルールは
今後廃止予定の、技能実習との比較をしてみると
その違いがわかります。
公表されたグランドルールをチェックしてみましょう。

<外国人の立場>
新ルールによって
VISAを取得し、日本に在留する外国人は
育成就労外国人(仮)となります。

技能実習の場合は、
実習でスキルを受け継ぐ立場から
労働職として扱われていませんが、
育成就労外国人(仮)
労働力需給調整手段のひとつとなり得る
=労働力として扱われる
といった方針が取られます。

そのため、
ノンスキルの状態では在留継続を認めず
スキルのある外国人を積極的に受け入れ
さらにスキルレベルアップさせる

ことを前提とする方針に転換となります。
そのため、育成就労外国人(仮)はいわば、
セミスキルと位置付けられる
特定技能1号候補生

という位置づけになる予定です。

<在留期間>
技能実習で認められる在留期間は
1号から3号まで
通算5年(1号:1年+2号:2年+3号:2年)
となっていますが、
育成就労(仮)では通算3年
の在留期間が与えられる予定です。
この3年間の在留期間内で、
技能実習や特定技能のような
レベル分けについては
現時点で確定していません
ので、
今後の運用ルールをチェックしたいところです。

<外国人のVISA取得要件>
技能実習の場合は
1号から3号までのレベルが用意されており、
外国人は1号取得のため
日本語能力試験N4合格相当の日本語スキル
を持つことが必要です。
さらに、
2号や3号にレベルアップするためには
実習の正常終了移行験の合格
が必須となっています。

これに対して、育成就労(仮)は、
申請時点で
日本語能力試験N5合格相当の日本語レベル
または

認定日本語教育機関などの日本語講習受講完了

が求められます。

が求められます。
講習をおこなう
認定日本語教育機関など
が気になるところ、
現時点では具体的な機関が明示されていません
ので
今後の運用詳細に注意したいところです。


また、
育成就労(仮)外国人が
引き続き日本に在留し、特定技能VISAに変更
するにあたっては、
特定技能試験の合格
日本語能力試験N4以上相当の試験合格
を求められる可能性が濃厚です。
※特定技能への変更条件となる試験で
 不合格となった場合は、
 同じ所属機関での就労継続という条件
 に限って、
 MAX1年の浪人期間が認められます。


<対象の仕事>
就労VISAや技能実習VISAには
対象の作業内容が定義されています。
たとえば、
技能実習は移行対象職種・作業
特定技能は特定産業分野・業務区分

とカテゴライズされており、
なんの業界のなんの作業か
で、そのVISAにフィットするがわかります。
JITCO:技能実習対象職種と作業

育成就労(仮)においても
これらのVISAと同じように
対象の仕事内容がカテゴライズされる予定
です。

なんの仕事が育成就労(仮)対象なの?
が気になるところですが、
基本的には、
技能実習の移行対象職種を引き継がず
特定技能の特定産業分野カテゴリー
を中心に展開していく方針

となっています。

ちなみに2024年4月現在の
特定技能産業分野と業務区分は
次のとおりとなっていますので、
これらの仕事が
育成就労(仮)の対象業務として
参考にできるかと考えます。


※特定技能対象職種のすべてが
 育成就労対象職種となるとは限りません。
 今後策定される運用ルール詳細に
 注意しましょう。


また一方、
一部の技能実習の職種や作業は
育成就労(仮)NG

となるケースが想定されますので
注意が必要です。
※現行で育成就労対象外になると
 予想される業種に、縫製業が挙げられます。




<雇用形態>
育成就労(仮)における
所属機関と外国人の雇用形態は、
特定技能と同様、原則、
直接雇用(正社員、契約社員など)
シーズン的な繁忙のある農業漁業
に関しては、
派遣就労が認められる予定です。


※業務の実情に応じた受け入れや
 勤務形態によっては
 ほかの仕事においても
 派遣就労が認められる可能性

 をまだ残しています。


<所属機関の要件>
育成就労(仮)において
所属機関となる事業者は、
技能実習と類似した運用として
育成就労計画(仮)を策定
育成就労機構(仮)の計画の認定を受ける
ことが必要となります。

育成就労計画(仮)の策定に際しては、
別途ご紹介する、
監理支援機関のサポートを受ける
ことも可能です。
※優良な所属機関に対しては、
 申請書類の簡素化などの優遇措置
 も予定されます。


<外国人の転籍>
技能実習生の場合は原則、
技能実習計画というプログラムが存在するため
中断や中止はあるとしても
転籍については想定されておらず
ルールがありません
これに対して、育成就労(仮)では、
次の条件をすべて満たせば転籍が認められます。


※③の「一定期間」は、対象分野ごとに
 
1年~2年の設定が想定されています。

育成就労(仮)外国人の
転籍意向の申し出先は
育成就労機構、監理支援機関、育成就労機関
のいずれでもOKとし、
申し出を受けた機関
育成就労機構に転籍受付の通知や届出義務
が発生し、
通知や届出を怠ると30万円以下の罰金
が科せられる予定です。

また、転籍先の機関
改めて転籍先での育成就労計画を策定し、
育成就労(仮)機構の計画認定
を受けなければなりません。

<送り出し機関>
育成就労(仮)外国人候補生は
については原則、
二国間協定(MOC)を締結する国の
送り出し機関からのみ受け入れ
悪質と判断されるは機関の排除を強化
する方針となっています。
二国間協定を結んでいない国の代表格として、
中国が挙げられますが、
これらの国への影響も注目したいところです。
また、技能実習では
実習生から送り出し機関に支払われた
各費用の不当な内訳
が多く指摘
されてきた過去がありますが、
育成就労(仮)では、
送出手数料などを透明化して
適正な負担ルールが設けられる予定です。

<監督機関>
技能実習における運用監督機関は
技能実習機構が存在しますが、
育成就労(仮)では
育成就労機構(仮)が創設されます。
労働基準監督署や出入国入国管理庁
との強い連携を目指すもので、
これまで以上に
VISAの適正管理やコンプライアンス
が求められま
す。

<サポート機関>
所属機関や外国人に対する運用サポート機関
としては、

技能実習
では監理団体(協同組合)が存在、
技能実習機構の認定を得ることで
その役割を果たしていますが、
育成就労(仮)では
監理支援機関がその役割を担います。

育成就労(仮)ルールにおける
相関関係を図にしてみると、
このようなイメージとなります。



当事務所でも、監理団体の皆さまから、

「監理団体は自動的に監理支援機関になれるの?」
「監理支援機関になるための要件ってあるの?」
「技能実習がなくなったら、ビジネスはどうすればいいの?」


といったお問い合わせをよく受けています。

これまで技能実習では
実習生の失踪ブラック雇用
さらには
一部の監理団体のずさんな監理
といった悲しい実態が
明らかになってきたことを受け、
最終法案では、
サポート機能が
十分に果たせない監理団体は
サポート業務を許可しない

と明示されています。

このことから、
監理団体が監理支援団体となるためには
改めて認可申請のうえ育成就労機構の認定を得る
運用となるのが濃厚です。
※具体策としては、
 監理団体役職員が実習機関と兼務の場合に
 一定の関与制限&外部監視強化
 監理支援機関の認定基準を高く設定

 などのプランが挙がっています。





【これからわかってくる?詳細ルール】

ようやくグランドルールが判明した
育成就労(仮)ですが、
数年後に廃止予定となる技能実習や
現行の特定技能のルールと比べると
まだ明らかになっていない詳細ルール
が待たれていることも事実です。

VISAサポートをする行政書士としての目線で
私が未確認と認識しているルールを
一覧にしてみました。
これらは、法案可決後に、
正式な運用ルール詳細が策定される予定ですので、
今後も引き続き注視していきたいですね。






【数年内施行!新ルールの今後に要注目】

関係者や外国人の間でささやかれていた、
技能実習制度の消滅、
そしてそれに代わる、育成就労(仮)の
そのルールのフレームワークが
今年ついに完成しました。
今後国会での法案可決を経て、
数年後の本格移行のために
詳細ルールが明らかになる予定です。

技能実習を経て得た
さまざまな知見や運用のベースから、
有能な外国人の皆さまの
さらなる成長につながることを願っています。

WINDS行政書士事務所は
VISAに関わるさまざまな皆さまをサポートすべく、
今後も育成就労(仮)をはじめとした
外国人VISAルールの最新情報を
引き続きキャッチアップしていきたいと思います。