コラム

【デジタル契約管理⇒コスパ&タイパ大!】電子契約

2024.10.09[契約]





【近年導入増!電子契約】

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
ビジネスにまた日常生活においても
欠かせない、契約。
従来より紙の書面によって取り交わされますが、
近年では、電子契約の活用も
多く見受けられるようになりました。

文書の取り交わしや管理を
デジタライズすることによって
コスト・タイムパフォーマンスの上昇
につながる一方、
デジタル化ならではの注意点もあります。

事業者の皆さまが
電子契約を適切に導入、定着いただけるよう、
書面との運用の違いや
メリットやデメリットも含め、
その特徴や活用の注意点をご紹介します。





【電子契約とは】

電子契約とは、
従来からある
紙文書ベースでの捺印や押印をせず
電子文書を作成
インターネットなどの
情報通信技術を利用
して
デジタル署名
タイムスタンプ
などの電子データ記録
をもって
締結する契約

を言います。

日本だけでなく世界中で混乱をきたした、
新型コロナウイルスの感染拡大
をきっかけに、
働きかたの多様化が進み、
リモートワークを導入する事業者が増加
してきました。

こうしたながれにおいて、

捺印や署名による出社や
紙の契約書の取り扱いが困難

となる事業者が続出し、
書面管理の効率化が強く望まれてきています。

リモートワークや長期出張など
事業者の責任者が不在であっても
出社なく承認や契約締結が完結でき

紙文書で作成しない
電子契約の取り組みが本格化
現在高く注目されている仕組み
となっています。

※実際に電子契約による利用増加が
 統計でも明らかになっています。
 ⇒JIPDEC:
企業IT利活用動向調査

ちなみに法律上、
電子契約は次のように定義されています。

この法律において「電子契約」とは、事業者が一方の当事者となる契約であって、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により契約書に代わる電磁的記録が作成されるものをいう。
(電子委任状の普及の促進に関する法律2条2項)






【電子契約の仕組み】

紙を一切使わず、ネット上で締結する
電子契約は、
単に契約書を電子ファイル化するだけでなく
署名や捺印をデジタル認証
する仕組みに置き換え、
本来の紙文書と同等の効力を持たせ、
セキュリティ性を担保するものです。

こうした証拠力、信用性によって、
次の2種類に分類されます。

①当事者型:電子署名
署名者本人の電子証明書を利用する
仕組みで、
会社の実印の役割を果たす機能です。
電子証明書は第三者機関である電子認証局が
厳格な審査のうえ、発行することによって、
法的効力の高い本人認証が可能
です。
「誰が」「何を」作成したかという、
電子ファイル作成者を証明でき、
権限付与による代行署名も可能です。

電子証明書の発行においては、
公開鍵暗号方式
で高いセキュリティをキープ
できるのも大きな特徴です。


JIPDEC: 電子署名と公開鍵暗号方式

②立会人型:電子サイン・メール認証
できあがった電子文書に

署名者情報としてメールアドレスが記録され
システムログも利用する

仕組みで、
会社の契約印・認印の役割を果たす機能です。
電子契約サービス上、
メールアドレス登録によって利用できる
システムパターンが主流となります。

メール認証で本人性を担保するので、
電子証明書取得などの利用負担が少なく、
取引先はメールアドレスさえあれば
取引先の事前準備や費用負担を
最小限に留めながら導入
できます。

署名時のアクセスコード付与や
補足書類の添付

によって、
本人性をより高めることもできます。




【電子契約に関わる法律】

電子契約に関連する法律は、
次のものが挙げられます。


①民法
B to B、B to C問わず
私人間契約ルールが定められる、
言わずと知れた大きな法律です。
2020年4月に施行された改正法では
契約の成立に書面は不要という
契約方式自由の原則が明記され、
ほとんどの契約におけるデジタル化
が認められるようになっています。

契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない
(民法第522条2項)

e-Gov: 民法

②電子署名法
契約トラブル発生時に
裁判や協議で権利や反論を主張するためには
形に残る証拠が必要となりますが、
証拠要件として、
署名者が本人の意思で作成した文書
つまり、
文書の真正性を立証しなければなりません。

文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
(民事訴訟法第228条第1項)


この点で電子署名法は、
本人の電子署名がある電子データ
本人の意思によって作成されたこと
(=文書の真正性)が法律上推定される
ものと明記、
電子署名の有効性を定め、
紙文書における捺印やサインと同様
法的効力を発揮するための基盤を整えています。

電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

電子証明書を発行する電子認証局は、
印鑑証明書などの証跡に裏付けられる
厳格な運用に基づいた本人確認をおこないますので
電子署名付き文書は高度の信頼が認められます。
e-Gov: 電子署名及び認証業務に関する法律

③電子帳簿保存法
法人税法や所得税法上、
ビジネスにおける会計書類
国税関係書類として
原則紙保存が義務付けられてきました。
しかし、
電子文書を紙出力して保存
という運用は手間もかかり、
管理上の課題もみられ、
解消を促す法律として制定されました。

この法律では、
国税関係書類
次のような要件を満たすことで
例外的に電子保存を認めています
電子契約の活用にあたっては、
こうした法律要件に対応することが大切です。


国税庁: 電子帳簿保存法

③印紙税法
一定金額以上の取引や領収証
に対して課される印紙税と
課税対象文書を定める法律です。

この法律で、
内閣総理大臣による答弁や
国税庁への照会回答
において、
電子文書は課税対象外と明言されました。
※内閣参議院質に対する答弁書162第9号
e-Gov: 印紙税法

④e-文書法

民間事業者等が行う書面の保存等における
情報通信の技術の利用に関する法律


民間事業者等が行う書面の保存等における
情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う
関係法律の整備等に関する法律

の総称です。

この法律では、
他法律で紙保存が必要と定められる文書
に対して、
スキャン&デジタル化データ保存
が認められるようになりました。
③の印紙税法とも内容が類似しますが、
こちらの法律では原則、
保存が義務付けられているすべての文書
と対象が幅広く定められています。
e-Gov: 民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律

⑤会社法
会社の設立、組織、運営、管理
について制定されている大きな法律です。

この法律では、
取締役会議事録作成における電子データ運用
ついて定めています。

3 取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
4 前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
(会社法第369号第3項、4項)

e-Gov: 会社法

次に掲げる規定に規定する法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置は、電子署名とする。
 6.法第369条第4項(法第490条第5項において準用する場合を含む。)
2 前項に規定する「電子署名」とは、電磁的記録に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
 1.当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
 2.当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。

(会社法施行規則第225条第1項6、2項)
e-Gov: 会社法施行規則

⑥建築業法
建設において
電子契約のような新サービスを導入する際、
経済産業省を通して規制を所管する省庁に
既存法規制にフィットしているかを確認できる制度
(グレーゾーン解消制度)が定められています。

この制度には技術的基準として、
 ①見読性の確保
 ②原本性の確保
 ③見読性の確保

以下の要件が定められています。

第一条から第六条まで(第三条第二項から第四項までを除く。)、第七条の二及び第八条から前条までの規定は、特定建設業の許可及び特定建設業者について準用する。この場合において、第四条第四項中「一般建設業の許可」とあるのは「特定建設業の許可」と、「特定建設業の許可」とあるのは「一般建設業の許可」と、第七条の二第一項中「第七条第二号イ、ロ若しくはハ」とあるのは「第十五条第二号イ、ロ若しくはハ」と読み替えるものとする。
2 法第十七条において準用する法第六条第一項第五号の書面のうち、法第十五条第二号に掲げる基準を満たしていることを証する書面は、別記様式第八号による証明書及び次の各号のいずれかに掲げる書面(指定建設業の許可を受けようとする者にあつては、第一号、第三号又は第四号に掲げる書面)その他当該事項を証するに足りる書面とする。
一 法第十五条第二号イの規定により国土交通大臣が定める試験に合格したこと又は国土交通大臣が定める免許を受けたことを証する証明書
二 第三条第二項第一号から第三号までのいずれかに掲げる書面及び指導監督的な実務の経験を証する別記様式第十号による使用者の証明書
三 法第十五条第二号ハの規定により能力を有すると認定された者であることを証する証明書
四 監理技術者資格者証の写し

(建設業法施行規則第13条第1項、2項)
e-Gov: 建設業法

⑦宅建業法
不動産業者の不正防止と
不動産購入者の利益保護を目的とした法律です。
2022年に改正され、
賃貸借・売買契約書や媒介契約書
重要事項説明書

などの不動産取引の電子契約
が認められるようになりました。
e-Gov:宅地建物取引業法



【紙契約書との違い】


そもそも契約書とは、
紙の契約書に捺印または押印することで
当事者が各意思に基づいて合意した証拠書類
として有効になる書類です。
もちろん、
口頭でも契約でも成立はしますので、
必ずしもすべての契約に書面が必須
ということにはなりませんが、
後々トラブルとならないために
合意事項を
書面の形として残し、保管しておくべき

であることは、疑いがありません。
※口頭契約とその有効性については、
 以前のコラムでご紹介しています。
 ⇒
こちら

これに対して電子契約は
同等の法的効力をキープしつつ、
パソコンやタブレット、スマートフォン
などの端末を使って
書面作成から管理の全プロセスを
最大限コンパクト化、
スピーディな締結を実現します。

紙文書と電子文書、
それぞれの形式や保管方法には
以下のような違いがあります。



契約書に大きく求められる
証拠力において、
電子文書はデジタルデータとして
改ざんリスク、ウイルス感染といった脆弱性
も残ります。
この対策としては、
締結日時を刻印するタイムスタンプの付与
が有効です。




【電子契約書のメリット・デメリット】

行政書士の目線から、
電子契約書のメリット・デメリット
をまとめてみました。
電子契約導入前に、ご参考ください。

<メリット>


①契約アクションの効率アップ
従来の紙文書としての管理では、
契約内容の合意にいたって
作成した契約書が、
印刷、製本、封入、送付といったアクション
によって取り交わされ、
取引先の捺印が完了すれば、
その原本が再度返送され、印紙貼付
その後、
義務期間である7年間以上保管、
さらに再度契約変更や更改となれば、
その書類を探し出して作り直す
などと、
物理的にプロセスに手間がかかりました。

これに対して電子契約は、
印刷・製本・郵送プロセスを省略でき、

契約アクションにかかる
タイムパフォーマンスが各段に挙がります。

電子契約書のデータも
クラウド上で内容やステータスを管理
締結遅延や確認漏れリスクも低減

でき、
紙文書にかかっていた時間を
営業やほかの業務に充てることも可能になります。
また、
過去の作成書類を確認する場面でも、
検索機能による容易な検索が可能です。

②コストパフォーマンスアップ
①の契約アクション効率化によって
書類の印刷代やインク代、
保管コストや郵送料金といった、
関連コストの削減や低減につながります。
なかでも大きな強みとしては、
電子契約書は印紙税対象外
であることです。

デジタル管理にかかるIT投資は必要
であるものの、
ほかのオペレーションへも目を配れ
タイムパフォーマンスも上がる
ことから、
総合的なコストパフォーマンス
の大きさを実感できるでしょう。

③コンプライアンス強化
堅実、安定した経営
をおこなう事業者にとっては、
コンプライアンスは非常に重要な要素です。
紙書類の保管となる場合の
改ざんや紛失などのリスク

を完全にぬぐうことはできず、
災害など発生した場合は
復元も難しくなってしまいます。


これに対して電子契約書は、
サーバーやストレージでの保管による
高いセキュリティを確保、
改ざんや紛失リスクが各段に少なく
なり、
万が一紛失したとしても、
復元が容易
になります。
作成した契約書の
ステータスや確認進捗も一元管理
することによって
業務の透明化や平準化にもつながるので、
安心して業務にあたることができるでしょう。



<デメリット>



①取引先の理解(コスト・導入)

電子契約は、自社での導入後、
いざ契約締結となる際には、
取引先にもそのシステム導入
電子証明書発行手数料などのコスト
負担がかかり

電子契約に対応して頂かなくてはならない
ことの理解と同意を得ることが、
大きなハードルとなると思われます。

取引先との既存契約書が紙で保管され、
新たにデジタル化に移行する
といった場合は、
契約フローや運用が変更となる

ことでストレスがかかり、
導入が思うように進まないおそれも
想定しなければならないでしょう。

②社内の協力・調整
電子契約の導入は少なからず、
社内の業務フロー変更
にもつながります。
システムを実際に利用するのはスタッフ
であるため、
従来のプロセスを変更することに
スタッフが抵抗を感じる

ことも想定しなければなりません。

社内業務フローが逆に複雑になってしまい
管理ミスなどのリスクを防止するためにも
社内説明のうえ、
スタッフにも理解を求めることは
欠かせないでしょう。

③不正アクセス・なりすましリスク
電子契約リスクとして大きな懸念点が、
サイバー攻撃でしょう。

契約内容や取引先などの
重要な機密情報が漏えい
した場合、
事業者の信頼度ダウンに直結しかねません。
また、
メールアドレスなどでの簡易的な本人確認
電子署名を使用しない電子印鑑や電子サイン
の活用にあたっては、
なりすましが可能な場合があります。

パスワードやユーザー権限管理などは
細心の注意を持ち、
堅牢な管理が見込めるシステムの取り扱い
が大切です。


【電子契約活用の注意ポイント】

電子契約の導入にともなう
メリットとデメリットを踏まえて、
行政書士として私が思う、
注意したいポイントと対策をまとめました。



①十分な準備と説明
電子証明書を利用した電子契約締結の際には、
自社だけでなく、
取引先やサービスオーナーも
コストと導入負担を余儀なくされます。
デジタル化によるメリットの大きさを
十分な期間をもって丁寧に説明して
理解を得る
ことが大切です。
理解を得た後は、
十分な期間をもって万全な導入
をおこないたいところです。

②デジタルNG契約書の把握
ほとんどの書面がデジタル化を認められているなか、
実は、法律上デジタルNGとされる契約書
が存在します。
​​​​​​また、弱者保護や紛争防止の観点から
紙の書面化が契約成立要件になっている書類

もあります。
代表的なデジタルNG文書は、
以下のようなものになります。



社内でも、
デジタルOK/NGの文書が混在すると
オペレーションが混乱するおそれ
がありますので、
契約内容を必ず確認したうえで、
電子契約運用の導入、活用を検討しましょう。

③社内体制や法律要件に合わせた導入
電子契約の活用にあたって
導入する専用システムについては
関連する法律要件を満たし、
社内プロセスや取り扱う契約パターン
にフィットしたものを選ぶことも
非常に大切です。

合意時期を担保するタイムスタンプは
過去にさかのぼっての刻印が難しかったり、
 バックアップ機能の有無
 電子証明書の有効期限更新
 移行や連携が難しいシステム
 デジタルNG書類の運用分け

なども考慮要素となると思われますので、
社内マニュアルを作成するなど
適切な契約管理を心掛けたいところです。




【適切なデジタル活用で充実した事業を】

リモートワークが定着し、
よりスピーディな対応が求められる現在、
電子契約の利活用は、
スムーズで確実な作業の実現だけでなく、
コンプライアンスも遵守できる、
まさに損のない営業ツールとなり得ます。
メリットとデメリット、注意点は明確ですので
自社プロセスと法ルールを加味して
適切に導入したいところです。


WINDS行政書士事務所は
こうした契約に関するコンサルティング
書面ドラフトやリーガルチェックの形で
事業者の皆さまの
確実な契約管理、DX化をサポートしております。
どうぞお気軽にご相談ください。