コラム

【縁組とステータスで変わる!】養子のVISA

2024.10.16[VISA]





【もしも養子が外国人だったら?】

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
海外と同じように日本にも存在する、
親子関係制度のひとつ、養子
縁組をした養子が日本人ではなく外国人
といった場面に対応する方も
いらっしゃるかもしれません。

日本では法改正により
養子の年齢要件が原則
6歳未満から15歳未満まで引き上げられた

ことは記憶に新しいですね。
法務省:養子縁組について知ろう

養親となる方が
外国人の養子または養女の方と一緒に
日本で生活したい場合、
その養子、養女の方は原則
新たにVISAを取得、
または養子にフィットしたVISAに変更
しなければなりません。

しかしながら、
養子であることの前提条件をふまえて
日本の養子ルールとVISAのルールは
必ずしも統一されているわけではない

ことから、
両面の要件を照らし合わせて
対応する必要があります。

養親や養子の縁組パターン、
そして養子のステータスに応じて
フィットするVISAについて解説します。




【養子縁組は2パターン】

外国人の養子がVISAの許可を得るための
ベース要件である、
養子の要件を知ることは非常に大切です。

養子縁組は、
養親となる方と養子(養女)との間に
血縁関係がなくとも
法律上の親子関係を作り出す制度です。
養子は、
縁組手続きをとることによって
新たに養親の子として迎えられます。
法的な親子関係が成立するので、
当然、養親と養子間には
相続権や扶養義務なども発生します。
※法的な親子関係が発生しない
 里親制度とは異なります。
法務省民事局:養子縁組パンフレット

この養子縁組には、
普通養子縁組
特別養子縁組

の2パターンがあります。

両パターンの縁組ともに、
日本人同士の縁組する場合は日本の法律に、
養親または養子のいずれかが外国人の場合は
日本とその外国両方の法律に
のっとって判断されます。

<普通養子縁組>
養子になる方が
実の親と親子関係をキープしたまま、
別の人を養親として
新たに法的親子関係を築くパターンです。

この手続きによって、

子は養親の苗字を名乗りながら、
実子として元々の親
養子として養親
というふた組の親を持つ

ことになり、
相続や扶養関係も
実の親、養親両方に対して
主張できる立場となります。

ただし、VISAルール上、

普通養子は嫡出子とはみなされず
配偶者VISAを取得することはできません。



※養子が配偶者(妻・夫)の子や孫、
 自分の孫の場合は、
 家庭裁判所の許可は不要です。

<特別養子縁組>
普通養子縁組とは反対に、
養子と養親が縁組することによって

実の親との法的親子関係が断ち切られる
パターンです。
また、

養子と養親の要件が
普通養子縁組とは少し異なる

のも特徴です。

基本的に縁組をするためには
養子となる方の実の親の同意が求められ、
養親は
監護期間として、
養子を6ヶ月間養育しなければなりません。
この期間中に養育状況の観察を経て
養親の適性や養子との相性など
審査を受けた結果、
縁組に問題ないことが確認できれば、

家庭裁判所が審判で認める
ことによって、
最終的に縁組が成立します。


実の親との親子関係が終了するため、
養子の扶養義務や相続の権利は
養親に対してだけ発生
します。

VISAルール上、

特別養子は嫡出子とみなされ
配偶者VISAの対象となります。







【4種類!養子が選べるVISA】

縁組によって養子となる外国人が
取得できるVISAは、
扶養を受けていることが大前提となり、
さらに養親と養子のステータスによって

次の4種類にしぼられるます。


①定住者(告示7号)
定住者VISAは、
特別な在留理由を考慮され、
法務大臣によって居住が認められる
外国人向けのVISAです。

定住者VISAは告示によって
1号から8号までラインナップ

されているなか、
外国人養子向けの定住者VISAは
7号という類型が該当します。


※類似類型の告示6号は
 18歳以上未婚である
 配偶者の連れ子であることが要件となりますが、
 養子縁組は要件とされていません。


このVISAを取得する際に注意したいのが
6歳未満という年齢制限です。
普通養子自体は何歳でも縁組OKですが、
養親との合理的で自然な関係性維持のため
VISAルールではこのように制限がかけられている
と考えられます。

②定住者(告示外)

養子が6歳以上である場合は
原則定住者VISAの要件から外れます。


しかしその場合でも
実の親の養育を受けることが難しく
養親の扶養を受ける必要性がある
ことも、十分に考えられます。
こういったケースでは、

告示外の定住者VISAの取得
が検討できます。



※定住者以外の告示外VISAとしては
 特定活動VISA
 
も取得できる可能性があります。

 当事務所までご相談ください。


①と②、両方の定住者VISA
の取得が見込まれない場合は
現在の学歴や職務経歴から
留学VISA
ほかの就労VISA

の取得を目指しましょう。


③家族滞在VISA

家族滞在VISAは、
外国人の配偶者や子など
扶養を受ける家族のためのVISAで、
養子の場合は、
縁組パターンや年齢を問わず、
養親の扶養を受けていれば取得が可能です。



このVISAの取得にあたって大切なのは、
養親の保有するVISAで、
養親の経済安定性や自立性、
責任の強さが求められます。

また、扶養を受けることが条件ですので、
資格外活動以外の就労がNGであることも
念頭に置きましょう。
養子縁組のパターンは問われないことから
縁組前の養子の経歴
(外国ですでに養子が仕事していたなど)
という場合もあるかもしれません。
その場合は、キャリアを踏まえて
ほかの就労VISA

の取得を目指しましょう。

ちなみに、養子の年齢も高い場合は、
扶養に入る必要性も重要です。
日本の義務教育修了相当の年齢になると
VISA審査が厳しくなる傾向
がありますので
高校生以上の場合は留学VISAがベター
と考えます。


④日本人・永住者の配偶者等VISA
特別養子縁組の成立(=実の子と同じ扱い)
の場合に、取得を認められるVISAです。
特別養子縁組は
普通養子縁組よりも厳しい要件
そして
家庭裁判所の最終審判
が成立条件となるため、
ご紹介する4種類のVISAのなかでは
もっともハードルが高いVISA
と言えるでしょう。







【縁組成立⇒VISA許可とは限らない】

ご紹介した4種類のVISAを
要件別にまとめると、次のようになります。



年齢を問われない特別養子縁組
仮に縁組が成立したとしても、
VISAがスムーズに取得できるとは限りません。
過去に裁判所の裁決取り消し、
高等裁判所での逆転敗訴の結果
VISAが取得できなかった
という判例
もあるので、
特に注意が必要でしょう。
横浜地裁:平成15年(行ウ)第31号主文

正式に養子縁組が成立してるのに
VISAを許可してもらえないかもしれない
とか、どう考えたっておかしくない?


そう、思われる方も
いらっしゃるかもしれません。

法律のルールとしては、
養子縁組が成立するか
の判断をすべき一方、
VISAは
養子がその経緯や経歴にかかわらず
日本に問題なく滞在できるのか

が重要視されています。
国益を守るというミッションから
外国人VISAの審査を担う出入国在留管理庁は
VISAの許可を容易には保証せず
必ずしも養子縁組成立=VISA許可とはならない
のが現状としてあります。
そのため、
養子縁組とVISAそれぞれの法ルールを
入念にチェックし
正確な申請書類の作成
真摯なアプローチによって

適切に着実に手続きを進める

ことが
許可の近道であることは間違いありません。





【縁組パターンを軸に適切なVISA申請を】

養子縁組は、
養子や養親となる方のステータスによって
縁組のパターンが分かれ、
そしてその養子が外国人である場合、
取得すべきVISAの種類も異なります。
縁組の成立だけで
簡単にVISAが許可されるとは限らないため
VISA審査に対するアプローチも
個別ケースによって工夫する必要もありますので
慎重、確実な申請を心掛けたいところです。

WINDS行政書士事務所は、
養子のVISAをはじめ、
日本でラインナップされる
さまざまなVISAのコンサルティング、
申請サポートを承っています。
セレクトすべきVISAや必要な書類について
お悩みのときは、是非当事務所まで
ご相談、ご依頼ください。