コラム

【不正競争防止法】限定提供データの保護

2024.12.18[契約]





【不正競争防止法の一翼を担う保護対象】

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
事業者のフェアな競争をキープする、
不正競争防止法
この法律で保護される情報としては、
営業秘密に加えて
限定提供データ
と呼ばれるものがあります。
IoTやAIの爆発的な普及によって、
ビッグデータをはじめとして
情報のながれ、管理方法はますます広がり、
より安全なデータの利活用環境が望まれる昨今、
限定提供データの把握、対応策をたてておく
ことは、ビジネスに不可欠でしょう。

今回は、
限定提供データの定義や不正行為の種類、
保護のための契約上の留意点などを解説します。




【限定提供データとは】

限定提供データとは、

業として特定の者に提供する情報
として
電磁的方法により相当量蓄積・管理
されている
技術上or営業上の情報

を指し、
該当するのは
事業者などが取引を通して
第三者に提供する情報として
商品としての提供されるデータ
コンソーシアム内での共有データ
といったビッグデータが想定されています。
※ビッグデータとは、
 人間では全体を把握することが難しい、
 巨大なデータの集まり
 を指します。

 ⇒総務省の定義

限定提供データが
法律上保護されるべき対象となったのは
事業者間の公正な競争を確保すること
を目的とする、

不正競争防止法の改正に起因します。

事業者が保有、使用するデータは、

第4次産業革命における
IoTやAIなど情報技術の進展によって
企業の競争力として源泉価値が上がっています。
これらツールを共有、利活用するうえで
ビッグデータは、
ビジネスにおいて、高い付加価値を生み出す
とされている一方、
複製不正取得、拡散されやすい側面から
投資回収機会ロスのリスクも高かったため、
安心・安全な利活用策が求められていました。
内閣府:第4次産業革命のインパクト

ビッグデータは
営業秘密データを保護する不正競争防止法
データベースの著作物を保護する著作権法
によって、情報保護策が立てられるなか、
営業秘密に該当しない要件ネックの解消
不正流通の防止

を目的に、
不正競争防止法改正によって、
商品として広く提供されるデータ
コンソーシアム内で共有されるデータなど
事業者が取引などを通じて
第三者に提供するデータを保護

する制度として
限定提供データの不正取得、使用、開示行為
を不正競争の定義に加えられています。




【限定提供データの要件】

限定提供データとして保護される情報は、
ビッグデータなどを念頭に、
商品として広く提供されるデータや
コンソーシアム内で共用されるデータなど
事業者等が取引等を通じて
第三者に提供する情報
です。

適用対象の情報は、
 限定提供性
 相当蓄積性
 電磁的管理性

の3つの性質を備えていることが大切です。

営業秘密となる情報
オープンデータ

は、
限定提供データとしての
適用から除外される情報となります。

これら定義をまとめると、
次の6つの要件を満たす情報が
限定提供データということになります。


経済産業省:限定提供データに関する指針

①事業者などが取引を通じて
 特定者に反復継続提供される
 (限定提供性)

ビジネスで
相手方が特定され、提供されるデータ

であること
そして
そのデータの保有者が反復継続的に提供、
or実際には未提供であっても、
反復継続提供の意思が認められる
こと
を要件のひとつとしています。



②デジタライズ
 &相当量蓄積されている
 (相当蓄積性)

データの性質にもよりますが、
社会通念上、デジタル管理&蓄積され
それによって付加価値が発生すること
が要件となります。

付加価値の判断基準としては、
該当データの蓄積や管理に投じられる
時間や労力、コスト
またサービス提供における設定価格
などが挙げられますので、
この要件にフィットするのであれば、
ビッグデータを前提にしながらも
少量データさえも
この要件にフィットすることもあり得ます。

③ID・パスワードなど
 アクセス制限されている
 (電磁的管理性)

特定者以外の第三者が
一般的&容易に予見する可能性
経済活動の安定性を確保するため

提供されるデータが
デジタル管理されており、
アクセス制限などによって
特定者に対してだけ提供されることが
認識できる
ことが要件となります。

アクセス制限は、
デジタライズされたユーザー認証
によっておこなわれる
ことを求められます。



④技術上or営業上に限定
ビジネス上限定される
ことが求められ、
事業者が利活用orそれが期待される情報
としては幅広いく該当するでしょう。
一方、
違法な情報、公序良俗に反する有害な情報
は、この要件からは外れます。



⑤営業秘密でない
不正競争防止法では
もうひとつの保護対象情報として
営業秘密が挙げられます。
この情報は、
秘密管理されオフィシャルでない情報
有用性のある情報
相当量蓄積される必要がない情報
電子に限らず紙や媒体などの記録情報

となることから、
限定提供データの要件からは外れます。



⑥オープンデータでない
無償で公衆に利用可能となる情報
またそれと実質的に同一と認められる情報

は、保護の必要性を欠くことから、
限定提供データの要件からは外れます。
無償かどうかの判断基準としては
データ提供の対価(金銭、なんらかの反対給付)
の有無が挙げられます。




【限定提供データに関する不正競争】

限定提供データ保有者の保護
そして、
取引安全の調和を図る
という観点から、
不正競争防止法では
データ保有者の利益を
直接的に侵害する悪質性の高い行為
を、不正競争として規定しています。

<経済産業省:限定提供データ侵害行為類型>

経済産業省:限定提供データに関する方針

データ侵害行為として共通するのが、
不正な
取得(データを手に入れ、管理下におく)
使用(データを使う)
開示(第三者にデータのことを知られる状態にする)

です。



そのうえで、
これら侵害行為者が
アクセス権限のある場合とない場合
の2パターン
に分けて想定され、
さらに
パターンそれぞれに
転得者&不正経緯事実の把握有無
によって3つの類型

にカテゴライズしています。

これら侵害行為に該当する場合、
限定提供データ保有者は、
差止、損害賠償、信頼回復措置請求
をすることができる一方、
転得者に重過失があっても
悪意(=不正経緯の把握)がなければ
侵害行為とは認められない

ことになります。
また、
政府の指針自体も
あくまでガイドラインの域を出ず
法的拘束力が持たないため、
刑事罰の対象から外れています。




【実務上のデータ保護対策】

行政書士の目線から、
私が限定提供データの保護における実務対策
を大きく4つ、ピックアップしてみました。

①当事者の個別契約書締結
限定提供データが
法律上保護対象となっているものの、
その政府指針は法的拘束力がないため、
データ保有者としておこなうべき
最大の保護対策はやはり、
決まりごとを設定して相手方の合意を得る
ことでしょう。
限定提供データを守るために
データ提供契約や秘密保持契約(NDA)
などを締結し、
対象情報と利用の範囲を定めておくことは、
未然に侵害行為を防ぐことにもつながります。
※秘密保持契約については
 
以前のコラムで詳しくご紹介しています。

②営業秘密とのダブル保護策策定
事業者の保有情報は、
限定提供データだけでなく
営業秘密も含まれているはずです。
事業のノウハウや秘匿性の高い営業秘密
の保護はもちろん、
その秘匿性バリアがない限定提供データ
も同じように保護できるように
契約条項の整備や特約の設定などの体制整備
も大切と考えます。
もちろん、この裏付けとなる
情報資産のレベルや管理区分設定分け
などの工夫も有効です。

③個人情報を見据えた体制
限定提供データのなかには、
顧客などのプライバシー情報も含まれる
ことが当然に予想されます。
事業規模やデータの種類を整理しつつ、
不正競争防止法だけでなく
個人情報保護法の観点からも
データの使用・開示範囲を設定

のうえ、
リスクを分析、対応策の策定
が望ましいです。

④国外とのデータ利活用における対策
限定提供データの提供先が外国
であったり、
格納先が国外のサーバ
である場合、
国外でのデータ侵害行為への対応策
をとっておきたいところです。

日本の不正競争防止法の適用範囲は、
法の適用に関する通則法
によって定まっています。

不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、加害行為の結果が発生した地の法による。ただし、その地における結果の発生が通常予見することのできないものであったときは、加害行為が行われた地の法による。(法の適用に関する通則法第17条)

前三条の規定にかかわらず、不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、不法行為の当時において当事者が法を同じくする地に常居所を有していたこと、当事者間の契約に基づく義務に違反して不法行為が行われたことその他の事情に照らして、明らかに前三条の規定により適用すべき法の属する地よりも密接な関係がある他の地があるときは、当該他の地の法による。(法の適用に関する通則法第20条)


この見解に基づけば、
不正競争防止法に基づいた
民事上の請求(=訴え)
の法律関係的性質は不法行為であり、
不法行為に関する通則法ルールとして
適用される

と考えられます。

ちなみに、
こうした渉外的なトラブルにおける
裁判管轄が日本か外国かについては、
民事訴訟法のルール(第3条の2、3)
で判断されます。
いずれにしても、
これを念頭においた保護プランを
契約条項とすることが必要です。
当事務所までご相談ください。




 

【大切なビジネス情報の保護対策を】

不正競争防止法のもと
限定提供データが定義付け、
そLして保護指針に加えられたことによって、
事業者の保有情報のほとんどが
より守られるよう、法ルールが整えられています。
一方、
保護策の検討において
これら以外の定義が存在する情報も
念頭に置きながら、
契約書などの合意書面に示して
侵害行為を予防することが重要と言えます。

WINDS行政書士事務所は
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