コラム

【誰が?どうすればいいの?】特定技能の「事前ガイダンス」

2025.03.05[VISA]





【特定技能スタートアップアクション】

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
特定技能外国人を受け入れる際、
所属機関となる事業者さまには
いくつかのサポート義務が発生しますが、
そのうちのひとつに
事前ガイダンス
の実施があります。

義務のひとつであることの認識
はもちろん、いざ実施となると
なにをどうすればいいのかわからない
という事業者さまも
いらっしゃるのではないでしょうか。

今回のコラムでは、
入国管理局で定められている
ガイダンス内容やスケジュール
関連手続きや注意事項など、
VISAサポートの専門家が紹介します。




【特定技能外国人向けのサポート】

事前ガイダンスを実施するにあたり、
まず、特定技能のサポート制度
を把握する必要があります。

日本の特定技能ルール上
外国人を受け入れる場合には、
事業者である所属機関
特定技能外国人支援計画
を立てて、
外国人がマンパワーとして
ストレスなく機能するために
スムーズな業務遂行や日常生活を
サポートする義務(=義務的支援
が設定されています。

出入国在留管理庁:特定技能外国人支援計画概要


出入国在留管理庁:特定技能外国人雇用における注意点


この支援計画上、
設定が義務付けられるサポート
のひとつに、
事前ガイダンスが含まれています。

義務付けではないが、
おこなうことが推奨されるサポート
(=任意的支援
も存在し、
所属機関や外国人の事情に合わせて
サポートを工夫することになります。
出入国在留管理庁:特定技能外国人運用要領




【特定技能の「事前ガイダンス」】

特定技能の事前ガイダンスは、
法律上定められた義務にしたがって
所属機関が特定技能外国人に対して
雇用条件の詳細や日本での活動内容、
日本入国時や在留生活における注意点
などを説明、確認をおこなうもので、
特定技能外国人支援計画上の
義務事項のなかでは、1番最初におこなう
ものになります。

実施者の所属機関が
特定技能サポート業務を登録支援機関に委託
すれば、
登録支援機関が所属機関に代わって
事前ガイダンスを実施することも可能です。

所属機関のサポート内容は
義務的支援と任意的支援に分かれ、
事前ガイダンスは義務的支援の中のひとつ
というご紹介をしましたが、
事前ガイダンスの中でもさらに、
義務的支援事項(=必ず説明)

任意的支援事項(=説明推奨)
に分かれます。






【ガイダンスの「義務的支援」「任意的支援」事項】

事前ガイダンスの説明・確認事項を
義務的支援・任意的支援別に
確認してみましょう。

<義務的支援事項>
特定技能外国人に対して
必ず説明と確認をおこなうべき事項は、次のとおりです。



①業務内容や待遇、労働条件
特定技能VISA申請に必要な書類である、
雇用条件書に記載される
雇用形態や業務内容、給与や労働条件など
を説明します。


建設業や産業機械製造業など
対象の業種分野のなかには

作業上取り扱う専門ツールや
作業現場独自のシチュエーションもあり、
注意点やや安全衛生事項も
この説明に含まれます。


②在留活動
特定技能外国人が、
在留する日本でできる活動(指定業種・作業)
できない活動(副業など)
について、説明します。

特定技能ルールでは
産業分野別に仕事や作業が指定され、
それが個々の外国人の方に
雇用条件書として示されますが
その指定範囲を超えた業務はできません。
この点について
外国人の十分な理解を得ましょう。

③入国やVISA手続き
特定技能外国人が
海外から日本へ新規入国する場合
また在留中
特定技能VISAを持っていない場合
特定技能VISAは持っているが
所属機関を変更(=転職)する
場合
それぞれVISA申請や入国手続きが必要です。

各ケースに必要な手続きを
ピックアップしてみました。



特定技能外国人がいる場所で
各手続きのステップも少しずつ異なり、
また手続き期限もあることを
しっかりと説明し、
入国時のトラブル
予定時期からの入社日遅れ
などの発生を未然に防ぎましょう。

④保証金支払い、違約金契約NG
特定技能外国人は
保証金や違約金などに関わるような契約
をしてはいけません。

そのため、
そうした契約はNGであることを説明し、
所属機関や仕事のあっせん機関と
そのような要件に合意していない
契約を結んでいないことを確認

しなければなりません。

過去には、
雇用契約不履行を理由とした退職時の違約金
所属機関在籍中のトラブルに備えて
保証金やプール金
などの名目で費用を徴収する契約

が、トラブル事例として挙がっていました。
また、金銭だけでなく、
株や不動産などの財産についての
管理や移転契約もNG

であることは、言うまでもありません。

入社準備・取次ぎ費用
特定技能VISA申請の必要書類のひとつ
雇用の経緯に係る説明書
の記載内容に該当します。

特定技能外国人が
所属機関と雇用契約を結ぶプロセス上、
自国の送り出し機関、仲介機関などに
仕事の紹介料などと称した金銭
を支払っている場合
があり得ます。
その場合、
外国人本人が
当該費用の詳細や支払先、支払日
などの内容を確認し
理解納得のうえ合意していることを確認

します。

⑥支援費用の外国人負担NG
法律上、
特定技能外国人の義務的支援
にかかった費用は
所属機関が負担しなければならない

ことになっていることを
特定技能外国人にも必ず説明をし
外国人が当該費用を
直接的にも間接的にも負担しないことを
理解していただきます。

反対に、
任意的支援にかかった費用は、
特定技能外国人に事前説明のうえ
負担をお願いすることができます。


⑦(新規入国時の)送迎サポート
特定技能1号外国人
日本に新規入国する場合

所属機関は
外国人が入国時に到着港や空港に出迎え
雇用先の事業所や住まいまで
送らなければならない

ことを説明します。

新規入国ではなく、
すでに在留中の場合や一時帰国する場合
このサポートは不要
です。

⑧適切な住居確保サポート
法律上、
所属機関には、
特定技能外国人に適切な住居の確保
が義務付けられています。

これについて、
特定技能外国人には
用意される住まいの広さや
家賃、水道光熱費などの負担費用
などを説明
します。

これら費用は通常、
振込給与から控除される場合が多いですが、
この仕組みを外国人が理解できない
ことから
トラブルに発展した事例がありますので
十分に理解してもらえるようにしましょう。

所属機関が提供する社宅は
自社所有のほか、借り上げ物件
など分かれますが、
物件使用上の注意事項
退社する場合の退去可否&住まい確保手段
なども合わせて説明しておくとベター
でしょう。

⑨仕事や日常生活などの相談や苦情の申し出
特定技能外国人も
日本での在留生活や日々業務において
悩みや不明点など生まれることが想定されます。

これについて、
特定技能外国人は
従事する仕事や日常生活などに関して
相談・苦情を言うことができ
所属機関はそのための窓口設置の義務があります

ので、
窓口の存在や連絡先、受付時間や連絡方法
などを説明します。


必ず説明することはもちろんのこと
なによりも、
外国人がすぐに連絡がとれること
を重点的に考慮した体制整備
関係行政機関の窓口情報提供
も大切であることを認識しましょう。

<任意的支援>
特定技能外国人に対して、
義務ではないもの、
おこなうことが望ましい、推奨する
とされる事項は、次のとおりです。



①日本の気候や季節に合う服装
特定技能外国人の国籍はさまざまで
日本の四季とは違う天候・気候に
馴染んできた方々も多くいらっしゃいます。
そんな外国人が来日する場合
すでに日本にいるが在留生活に慣れない場合
日本の四季や適切な服装などは
なかなかイメージできない

といったことも考えられ、
そうした情報を提供してもらえるのは
非常に助かるのではないでしょうか。
今後の長い在留生活に備えられるためにも
説明してことがおすすめです。

②本国から持参OK&NGなもの
特定技能外国人が
母国では問題なかったとしても、
いざ日本入国時に持ち込みNGな物品
があることも事実です。
入国手続き上、
この点がわからず
持ち込もうとして空港で拘束される
といったことがないよう
事前注意事項として説明すると良いでしょう。

ちなみに、
入国時に日本に持ち込みNG
とされるおもな物品として、

 高級ブランドコピー品
 肉、果物、植物の種
 絶滅危惧種動物やその毛皮

 規定量をオーバーした液体


といったものが挙げられます。
動物検疫所:手荷物としての持ち込み

これらNG物品とともに、
在留生活上あると良いもの
禁じられてはいないが持ちこまないでほしいもの

なども、合わせて伝えると良いと思います。

当面必要な費用と金額
来日or入社してから
当面必要になるであろう費用
の種類や金額もまた、
事前に説明しておくとベターです。

たとえば、
所属機関が社宅を提供する場合に
家賃や食費、水道光熱通信費
などの徴収が想定されますが、
その種類や実際の相場などがわかると
特定技能外国人も適切な生活に役立つでしょう。

これら費用と同様に
リアルタイムの物価傾向
も合わせて説明すると
異国での生活適応にも役立ちます。
費用の支払いにおいて、
給与支給日からの支払シミュレーション
も有効な情報と考えます。

④所属機関からの支給物
①から③の事項にも関係しますが
入社後に所属機関から支給されるもの
を事前説明しておくことによって
特定技能外国人は
自前での用意や不要な経費の支払いを防ぐ
ことができます。

所属機関から想定される支給物としては、

制服・作業着
文房具
住まいに設置されている備品(貴重品入れなど)


などが挙げられます。




【誰が?いつ?どうやって?具体的な実施方法】

説明すべきこと、説明した方がいいこと
をふまえて
実際事前ガイダンスの実施にあたっての
役割や体制をまとめてみました。

<実施時期>
特定技能制度創設当初は
雇用契約締結後でもOK
といった傾向の時期はありましたが、
現在は、
新規入国の場合・在留中
いずれの場合でも
雇用契約締結前が望ましい
とされています。
義務的支援事項として労働条件の説明
含まれていることが理由です。

<実施者>
実際にガイダンスで説明、確認をおこなうのは
所属機関です。

ただし、
所属機関がサポート業務を
登録支援機関に委託
しているのであれば
登録支援機関が所属機関の代わりに
実施してもOKです。
※登録支援機関とその役割については
 
以前のコラムでもご紹介しています。
 
<実施時間>
特定技能外国人が十分に
説明・確認内容を理解するため、
事前ガイダンスにかける時間は
3時間以上
設定することが義務付けられています。
この時間を短縮すると
特定技能要件に抵触するため、
気を付けましょう。

<使用言語>
特定技能制度創設当初は
日本語だけでもOKという
見解もみられてきましたが、
特定技能外国人が内容を十分に理解するためにも
現在は
母国語での実施が義務付けられています。
所属機関または登録支援機関は
特定技能外国人の母国語に精通した
担当者をアサイン
万が一そうした対応がかなわない場合は、
通訳人材を準備しなければなりません。

<実施方法>
事前ガイダンスは
実施者と特定技能外国人が顔を合わせて実施
しなければなりません。
この実現方法として認められているのは、

 対面
 WEB会議(TEAMS、ZOOM MEETINGなど)
 テレビ電話


などがありますので、
特定技能外国人が現在いる場所や
人数などを考え、適切な方法を選びましょう。
メールや文書だけの実施はNGです。

<実施証明>
事前ガイダンスは
上記まで説明した条件を満たしたうえで
実施することがマストで、
そのことを証明する書面を残すことが必要です。

この書面が、
事前ガイダンスの確認書
です。

実施後に、
実施者がこの書面を用意し
説明・確認を受けた
特定技能外国人の署名を取り付けます。

出入国在留管理庁:事前ガイダンスの確認書



【事前ガイダンスはこのポイントに注意!】

事前ガイダンスの実施にあたり
実施者の方が見落としがちなこと
当事務所がよく受けるご相談
を、注意ポイントとしてご紹介します。

注意①本人確認
事前ガイダンスは
特定技能外国人の顔を合わせる方法で実施
しますが、
ガイダンスに来た外国人が本人かどうか
は、
パスポートや在留カードを提示してもらう
などして
確実な確認をとりましょう。

当事務所でも過去には
別人が対象の外国人になりすまし
本人だったが
用意した雇用条件書が別の者だったために
VISA不許可

など、
信じられないようなトラブル事例のご相談
を受けたことがあります。

注意②生活オリエンテーションとは区別
所属機関で
事前ガイダンスと生活オリエンテーション
を同じと考える
ケースが散見されますが、
これは大きな誤解です。


雇用締結前(推奨)に就業・生活留意事項
の説明・確認をする事前ガイダンスに対して、

生活オリエンテーションは
入国後、留学生活全般に関する情報提供

であり、
実施タイミング、内容ともに
明らかに異なりますので、
注意しましょう。


注意③実施は丁寧&確実に
事前ガイダンスの実施目的は、
特定技能外国人がサポート内容の理解
です。
顔を合わせて、母国語で実施したとしても
説明が雑になったり、スピードが早過ぎると
本人の理解には結びつきません。
ガイダンス内容が理解できているか
説明の合間に確認をとり、
必要な情報を余すことなく伝える
ことを心掛けましょう。

④必要に応じたアフターフォロー
事前ガイダンスは必須アクションですが、
1回実施すればよい
といったものではなく、
あくまでガイダンスが機能することが大切です。

特定技能外国人が
ガイダンス内容がよく理解できなかった
ガイダンスの場では理解していたが
内容を忘れてしまった

場合に、
不明点や悩みを抱えたまま
日々の業務に影響がおよびます。

このような場合、たとえば、
フォローアップガイダンスの実施
苦情・相談窓口のフル活用
によって、
入社後の気付きや懸念、改めて知りたいこと
などをヒアリングする

なども有効と考えます。

また、
特定技能外国人でも
新規入国組と在留組で
業務の習熟度や生活の適応能力に
差があることも考えられますので、
外国人ひとりひとりに合わせて
支援計画をカスタマイズ
するのも良いでしょう。




【貴重な特定技能マンパワーを守るために】

特定技能外国人が
実際に所属機関と雇用契約するあたって
事前ガイダンスは法律上マストの対応です。
義務要件どおりに、
正しく確実に実施するだけでなく、
業務現場や在留生活における
トラブル回避にも重要な機会となります。

特定技能外国人が
長く所属機関の貴重な戦力となるため、
また良好な関係キープのためにも
きめ細かくきちんと実施したいところです。

WINDS行政書士事務所は
特定技能VISAにおける申請だけでなく、
所属機関や登録支援機関の皆さま
に対しても、
コンサルティング、サポートを承っております。
どうぞお気軽にご相談ください。