コラム

食品衛生法の改正

2020.01.08[風俗営業法]




【食品衛生法が改正されました】

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。

今年、いよいよ改正食品衛生法によるHACCPの義務化の猶予期限が訪れます。

「食品衛生法」は、今から2年前の2018年6月に改正され、同時に公布されました。

 厚生労働省「食品衛生法の改正」⇒こちら



【HACCPとは】

「HACCP」という言葉を耳にされていた方は多いのではないでしょうか。
一般的には「ハサップ」「ハセップ」という呼び方をされています。

これは、
 危害Hazard
 分析Analysis
 重大・危機的Critical
 管理Control
 Point
の頭文字をとったものです。

製造や調達、加工、販売、といった、
食品に関わるあらゆる工程では常に、
微生物汚染や事故などの危害がおよぼされるおそれがあります。
そういったおそれが現実に発生するリスクを事前に分析して、
分析結果に基づいた製造工程上の具体策のキーとなる「重要管理点」を定めて、
連続的な監視により、フードチェーンの安全性を確保しようという、
衛生管理プロセスです。
※管理対象は、モノでも設備でもなく、あくまで「製造過程」です。

 厚生労働省「HACCPとは」⇒こちら

この管理システムが構築されたのは、
NASA(アメリカ航空宇宙局)でアポロ計画の実施プロセスにおいて、
宇宙食の安全性を高めるという課題がきっかけでした。

「HACCP」は現在、欧米の先進国では、日本よりいち早くグローバルスタンダードとされ、
世界中で多くのメーカーが品質改善に取り組んでいます。

今回、日本でもHACCPの義務化に踏みきった背景としては、

食品の輸出入や外食産業などといった
食を取り巻く環境の大きな変化
過去に起こった、ノロウィルスやO-157などによる
食中毒事件などの脅威に直面している現状から、
食の安全が早急に求められているということが挙げられます。
また、
年東京オリンピック・パラリンピックの開催が控えている
ことも、要因のひとつと言えるのではないかと考えます

このHACCPを含めて、
食品衛生法の改正によって大きく変わる3点のルールについて、ご紹介いたします。



【①HACCPの導入が絶対に必要となります】

食品衛生法の改正により、まずHACCPが義務付けられました。

対象業者は、
規模の大小にかかわらず、「飲食品にかかわるすべての業者」です。

「飲食品にかかわるすべての業者」とは具体的に、

 製造メーカー
 加工業者
 流通企業、事業者
 飲食店
 食品販売店


が挙げられます。
この業者の規模は大小にかかわらず、例外はありません。

対象業者は、HACCPの厳格な基準のもとに、
HACCPにかかわる書類の作成・管理・保存をしなければなりません。

もしも対象業者が、HACCPができていないと判断されれば、
行政から「衛生管理ができていない」と評価されることになり、
客足が遠のいてしまうかもしれません。



【②調理器具や容器包装の新規制がスタートします】

食品を製造、加工するために使用されている、調理器具や容器、包装資材。
その材料は、プラスチックや紙、金属、ガラスなど、様々なものがありますが、
今後は、法令で認められた素材以外は利用できなくなります。

現在は、一部の素材について、
「原則」使用は認めるが、例外的に使用を制限すると定められています。

ネガティブリスト方式、と呼びます)
※現在、世界でネガティブリスト方式を導入している国は、
 日本、カナダ、ロシア、韓国、台湾、タイなどが挙げられます。


この「原則」が、新規制スタートにより、
安全性が保障された素材しか使用ができない、というルールに変わります。
ポジティブリスト方式、と呼びます)
※現在、韓国、タイもポジティブリスト方式への移行を検討しています。

利用できるものは、食品に使用するのに適しているかどうか、によって法律で決められます。
※紙や金属は当面据え置きとし、まずは合成樹脂の容器包装から導入を開始する方針です。


 ※厚生労働省HPより参照。 

規制により、食品の仕入れや販売に大きな影響がおよぶことは間違いありません。
対策としては、素材の安全性を担保するために、
原材料メーカーやサプライヤーとの契約を締結すること、
すでに締結済みの契約の見直しを行う
ことが必要です。


【③営業許可申請の許可基準が変わります】

現在、飲食物の提供においては、
取扱品目に応じて、政令で34種類の許可業種が定められています。


 ※厚生労働省HPより参照。

各業者は、業種に合わせて必要な申請をおこない、営業許可を受けますが、
今後はこれらの許可業種が見直され、
食の安全リスクや営業実態に問題はないか
という観点で許可がおりることになります。


営業実態から、食安全に対するリスクが低いとの評価が得られれば、
許可より要件がゆるやかになる、「届出」でも問題がなくなるようにしよう!
というルールを作ることが予定されており、検討が重ねられています。

 厚生労働省「食品の営業規制に関する検討会」⇒こちら


【改正法の施行期日が迫っています】


2019年10月、食品衛生法の施行期日が

2020年6月1日

と公表されました。

この中で、
一般衛生管理基準やHACCP義務化に関しては1年間の猶予期間が設定され、
2021年6月1日に完全義務化となります。
対象業者は、2021年5月31日までに、HACCPを導入しなければなりません。

飲食店を営む事業者さまや企業さま、またお取引先さまと、
食品流通における川上から川下まで大きく影響する、この食品衛生法の改正。

完全義務化の対応猶予期間の1年間について、皆さまはどのような感覚をお持ちでしょうか。
まだ先のように感じられる気もしますが、
事業の経過とともに、気が付けばあっという間に1年間が経ってしまい、現場が混乱してしまう、
という事態にもなりかねません。

しかし、HACCPの導入は、
経営体質の改善や、お客さまの評価、スタッフ教育による対応意識の向上にもつながります。
また、正しく実践ができれば、実際はコストも多くかかることはなく、
むしろ、利益アップのきっかけにもできる、というメリットがあります。
しっかりと導入、実践していくためには、早い段階で綿密な計画を立てておくことが重要です。

WINDS行政書士事務所では、
HACCPプランのご提案、契約内容のリーガルチェック
といったサポート、コンサルティングをさせていただいております。
施行期日に備えて、盤石に準備を行えるよう、お早めにご相談ください。