コラム

「代表取締役」と「社長」

2020.06.24[行政書士・業務]




【会社のトップの「呼び方」】

こんにちは。西新宿の行政書士、田中良秋です。
会社のトップとしてご活躍されている方を、
皆さまはどう呼んでいますか?

ある方は、「社長さん」
またある方は、「代表」

などと呼ばれているかもしれません。

また、ホームページや、オフィシャルな文書上では、
「代表取締役」

という肩書きを見かけることも、あるのではないかと思います。

もしかすると、「代表取締役社長」
と呼ばれている方がいるかもしれません。


【代表取締役とは】

私たちが会社のトップに対してこれらの呼び名には、
どのような違いがあるのでしょうか。

日本には会社の設立や組織、運営、解散などについて定めた
「会社法」という法律があります。

「代表取締役」は、
この「会社法」で定められている呼び名です。
法律で定められた肩書きであるとも言えます。

この呼び名の背景としては、
会社の機関設計と呼ばれる、会社のシステム作りが関係します。



会社の機関設計は、シンプルな形であっても、
最低限、以下の図のような構成とすることができます。

1番シンプルな組織は、
取締役と株主の譲渡制限のみが備わっている、A社となります。
現在の会社法では、株式の譲渡制限を条件に、
A・B・C・D社のように、取締役会は設置しなくても、法人の設立が可能です。
※中小企業ではこのように小規模な機関設計となっていることが多いです。




取締役会を設置する会社(取締役設置会社)では
取締役会が業務を執行するための意思決定を行います。
この取締役会の構成員となるのが取締役です。

取締役が3名以上いる取締役会設置会社は、
必ず
「代表取締役」を1名選出します。

代表取締役は、
会社創業時に作成する定款で定められた人
または
定められた方法で選ばれた人
が就任します。
※代表取締役は1人だけではなく、複数選任することができます。
※就任する代表取締役についての情報は、定款に記載されます。


代表取締役は、会社の代表として、
会社が契約を結んだり、法廷に立つなどの強い権限を持ちます。
この権限は、取締役会などによる機関の意思決定で決められるので、
代表取締役だけが単独で意志決定をしないように、
その行為は、会社全体でブレーキがかかる仕組みがとられています。



【社長とは】

「社長」は、代表取締役とは違い、法律で定められた呼称ではありません
商習慣上、会社の最高責任者として業務を指揮する者の呼び名です。
また、会社内部の役職という定義がなされています。
そのため、社長は必ずしも代表取締役と同じ人とは限りません
代表取締役が複数選任できるのに対して、
社長は通常、会社1社に1人の存在となります。

社長に似た定義で呼ばれている役職名としては、
以下のようなものがあります。

 顧問
 会長
 副社長
 最高経営責任者
 CEO(Chief Executive Officer)


これらの役職がどのような立場や役割を持っているのかは、
会社概要の情報だけではわからないことが多いですので、
ビジネスを進める際は、慎重に確認をとっていくことが大切かもしれません。


【表見代表取締役とは】

そのほか、
会社法には、以下の規定を確認することができます。

株式会社は、代表取締役以外の取締役に、社長、副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には、当該取締役がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負う。(第354条)

これは、「表見代表取締役」という肩書についてのものです。

代表取締役がもつような、会社の代表権限を持たない者が、
対外的な取引をしたことを思い浮かべてみましょう。

もしその相手(=第三者といいます)が、
その権限がなかったことを知らなかった(=善意といいます)とき、
その無権限者は、相手にとっては代表取締役に見えた
(=表見代表取締役)と考えられ、
会社はその行為に対する責任を負わなければなりません。

日常会話で知られている「社長さん」や「会長さん」に対して、
誤った見方をしてしまい、取引をすると、
思わぬトラブルに発展するおそれもありますので、注意したいところです。


【役職の肩書きと選任のバランス】

このように、
代表取締役と社長の定義には違いがあります。
私自身も、行政書士として業務上、

「代表取締役社長」
「代表取締役CEO」


といった肩書きがついた方にお会いする機会も少なくありません。

このような肩書きが存在する背景としては、
その会社内外で意志決定しなければならない場面で、
会社が効率的な判断をするため、
または余計な混乱を招かないため、
代表取締役と社長の両方を兼ねる必要があることが考えられます。

イレギュラーなケースでは、
複数人選任できる代表取締役の仕組みを利用して、

代表取締役会長
代表取締役副社長


という者を選任することもできます。

またそういった肩書きがありながら、
実際は会社の代表権がないというケースもありえます。

会社に所属するどの人に、
どの権限を、
どのような肩書きを持っていただくのか。
代表取締役は何人選任するのか。


たとえば、

複数の案件についての意思決定を、スピーディに行いたい場合は、
複数の代表取締役を設置する
意思決定についての意思決定を一本化したい場合は、
代表取締役1人のみを設置する

といった考え方ができます。

これについては、
同じ業種や似たような規模、企業風土の会社さまを研究のうえ、
検討することも大切です。

会社のトップや責任者の肩書きに、
法律的なものと商習慣上のものが両方存在するという認識は、
取引だけでなく、企業や機関設計の際にも役立ちます。

WINDS行政書士事務所では、
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